Wilson病
概要
Wilson病は、ATP7B遺伝子変異による常染色体劣性遺伝性疾患で、体内の銅排泄障害により肝臓や脳などに銅が沈着し障害をきたす。主に小児期から若年成人に発症し、肝障害や神経症状が特徴である。早期診断・治療が重要で、未治療の場合は致死的となる。
要点
- 銅の排泄障害による全身臓器障害
- 肝障害・神経症状・精神症状が主徴
- 早期診断・治療で予後が大きく改善
病態・原因
Wilson病は肝臓から胆汁への銅排泄に関与するATP7B遺伝子の機能喪失により発症する。銅が肝臓に蓄積し、やがて全身臓器(特に脳、腎、角膜)に沈着して障害を引き起こす。常染色体劣性遺伝形式をとる。
主症状・身体所見
肝障害(肝炎、肝硬変、急性肝不全)、神経症状(振戦、錐体外路症状、構音障害)、精神症状(行動異常、認知障害)がみられる。角膜のKayser-Fleischer輪は診断的価値が高い。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血清セルロプラスミン | 低値 | Wilson病の診断に特異的 |
| 24時間尿中銅排泄量 | 高値 | 100μg/日以上で診断的 |
| 肝生検 | 肝組織内銅沈着 | 銅含有量250μg/g乾燥肝組織以上で確定 |
| 眼科検査 | Kayser-Fleischer輪 | 銅沈着による角膜周囲の褐色リング |
診断は臨床症状、低セルロプラスミン血症、尿中銅排泄増加、肝組織銅沈着、Kayser-Fleischer輪の有無などを総合して行う。MRIで基底核の高信号など神経症状の評価も重要。
治療
- 第一選択:ペニシラミンやトリエンチンによる銅キレート療法
- 補助療法:低銅食、亜鉛製剤投与
- 注意点:治療中断で急性肝不全や神経症状悪化のリスク
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 自己免疫性肝炎 | 抗核抗体陽性、IgG高値 | セルロプラスミン正常、銅沈着なし |
| ヘモクロマトーシス | 鉄過剰蓄積、皮膚色素沈着 | フェリチン高値、銅沈着なし |
| 肝硬変 | 原因多様、神経症状まれ | セルロプラスミン正常 |
補足事項
Wilson病は小児・若年成人の原因不明の肝障害や神経症状の鑑別で必須。家族歴や遺伝子診断も有用であり、無症候性家族のスクリーニングも推奨される。肝移植は重症例や治療抵抗例で考慮される。