マンガン中毒
概要
マンガン中毒は、主にマンガンの過剰曝露によって生じる神経障害を主体とする中毒性疾患である。工業現場などでの吸入や長期摂取により発症し、パーキンソニズム様の運動障害を呈することが特徴である。
要点
- 慢性曝露により中枢神経障害(パーキンソニズム)が出現
- 職業性曝露が主な原因で、進行すると不可逆的な障害も
- 血中・尿中マンガン濃度測定やMRI所見が診断に有用
病態・原因
マンガン中毒は、溶接や鉱山作業などでマンガンに長期間曝露されることで発症する。吸入経路が主であり、体内に蓄積したマンガンが中枢神経系、特に大脳基底核に障害を及ぼす。肝障害などで排泄が障害される場合にも発症リスクが高まる。
主症状・身体所見
初期には易刺激性、記憶障害、精神症状などがみられ、進行すると歩行障害、筋強剛、振戦などパーキンソニズム様症状が出現する。顔面筋の仮面様表情や、姿勢反射障害も特徴的である。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血中・尿中マンガン濃度 | 高値 | 曝露歴と合わせて評価 |
| 頭部MRI | 大脳基底核のT1高信号 | 被殻・淡蒼球優位 |
血中・尿中マンガン濃度の上昇と神経症状の組み合わせ、曝露歴が診断の鍵となる。MRIでは被殻や淡蒼球のT1強調画像で高信号を認めることが特徴的である。
治療
- 第一選択:曝露源からの隔離・除去
- 補助療法:キレート剤(EDTAなど)の投与
- 注意点:進行例では神経症状が不可逆的となることが多い
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Parkinson病 | 進行性・高齢発症・震戦主体 | MRIでT1高信号なし |
| Wilson病 | 若年発症・肝障害・Kayser-Fleischer輪 | 血清銅・セルロプラスミン異常 |
| 鉛中毒 | 消化器症状・貧血・末梢神経障害 | 血中鉛高値・基底核所見なし |
補足事項
マンガン中毒は早期発見と曝露制限が予後改善に重要である。パーキンソニズム症状は抗パーキンソン薬に反応しにくいことが多い。職業性疾患としての認知も重要である。