ヘモクロマトーシス
概要
ヘモクロマトーシスは鉄代謝異常により全身臓器に鉄が沈着し、肝障害や内分泌障害、心疾患など多彩な臓器障害を引き起こす疾患。多くは遺伝性(常染色体劣性遺伝)で、成人以降に発症する。早期診断・治療が予後改善に重要である。
要点
- 鉄過剰により肝・膵・心・皮膚など多臓器障害を生じる
- 典型例は肝硬変、糖尿病、皮膚色素沈着の三主徴
- フェリチン高値やトランスフェリン飽和度上昇が診断の鍵
病態・原因
ヘモクロマトーシスは主にHFE遺伝子変異による鉄吸収過剰が原因で、腸管からの鉄吸収が制御不能となる。体内に過剰な鉄が蓄積し、肝臓・膵臓・心臓・皮膚・関節などに沈着して臓器障害を引き起こす。二次性には多輸血や鉄剤過剰投与なども原因となる。
主症状・身体所見
初期は無症状のことが多いが、進行すると倦怠感、関節痛、肝腫大、皮膚色素沈着(褐色〜灰色)、糖尿病、性腺機能低下、心不全、不整脈などを認める。肝硬変や肝癌のリスクも高まる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血清フェリチン | 高値 | 体内鉄過剰の指標 |
| トランスフェリン飽和度 | 上昇(45%以上) | 鉄過剰の早期スクリーニング |
| 肝生検 | 鉄沈着の確認、肝障害評価 | 鉄染色(Berlin blue)で沈着を証明 |
| 遺伝子検査 | HFE遺伝子変異の検出 | 家族歴や確定診断で有用 |
血清フェリチンとトランスフェリン飽和度の上昇が診断の中心となる。肝生検で鉄沈着を確認し、HFE遺伝子変異の有無を調べる。MRIによる臓器鉄沈着評価も有用。
治療
- 第一選択:瀉血療法(定期的な採血による鉄除去)
- 補助療法:鉄キレート剤(瀉血困難例)、合併症管理(糖尿病・心不全など)
- 注意点:鉄剤・ビタミンCの投与禁忌、肝癌スクリーニング
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Wilson病 | 銅代謝異常、Kayser-Fleischer角膜輪 | 血清銅・セルロプラスミン低値 |
| 慢性肝炎 | 鉄沈着なし、肝炎ウイルスマーカー陽性 | フェリチン正常〜軽度上昇 |
| 鉄芽球性貧血 | 小球性貧血、鉄利用障害 | 骨髄鉄増加・血清鉄低値 |
補足事項
欧米ではHFE遺伝子変異による遺伝性が多いが、日本ではまれで二次性の頻度が高い。早期発見・治療により臓器障害の進展を防ぐことができる。