鉄欠乏性貧血
概要
鉄欠乏性貧血は体内の鉄不足により赤血球の産生が障害される最も頻度の高い貧血である。慢性的な出血や鉄摂取不足、吸収障害が主な原因となる。臨床的には徐々に進行し、全身倦怠感や動悸、息切れなどを呈する。
要点
- 鉄不足による小球性低色素性貧血が特徴
- 月経過多や消化管出血など慢性出血が主因
- 治療は原因検索と鉄補充が基本
病態・原因
鉄欠乏性貧血は、鉄の摂取不足、吸収障害、または慢性的な出血(消化管出血や月経過多など)による鉄の喪失が原因となる。鉄はヘモグロビン合成に必須であり、不足すると赤血球の産生が障害される。
主症状・身体所見
全身倦怠感、易疲労感、動悸、息切れ、頭痛、めまいなどがみられる。進行例では舌炎、口角炎、スプーン状爪(匙状爪)、異食症(氷食症など)が認められることがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 末梢血液検査 | 小球性低色素性貧血 | 赤血球恒数の低下 |
| 血清鉄・フェリチン | 低下 | フェリチンは早期から低下 |
| 総鉄結合能(TIBC) | 上昇 | トランスフェリン増加 |
| 網赤血球数 | 正常〜軽度増加 | 反応性増加のことも |
血液検査で小球性低色素性貧血がみられ、血清鉄・フェリチンの低下、TIBCの上昇が特徴的である。消化管出血など原因検索のため便潜血検査や内視鏡検査も重要となる。
治療
- 第一選択:経口鉄剤投与(鉄分補充)
- 補助療法:原因疾患の治療、食事指導
- 注意点:消化管出血など基礎疾患の精査・再発予防
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 鉄芽球性貧血 | 鉄補充無効、環状鉄芽球出現 | 骨髄所見で環状鉄芽球 |
| 慢性炎症による二次性貧血 | 慢性疾患背景、炎症マーカー上昇 | フェリチンは正常~高値 |
| 巨赤芽球性貧血 | ビタミンB12・葉酸欠乏、巨赤芽球出現 | 大球性貧血、MCV上昇 |
補足事項
鉄剤投与中は消化器症状や便色変化が生じやすい。鉄補充に反応しない場合は吸収障害や他疾患の合併を考慮する。高齢者では消化管悪性腫瘍の除外が重要である。