無トランスフェリン血症
概要
無トランスフェリン血症は、血清トランスフェリンが著しく低下または欠如するまれな遺伝性疾患である。鉄の運搬障害により重度の貧血と組織への鉄沈着をきたす。常染色体劣性遺伝形式で発症する。
要点
- 血清トランスフェリンが極度に低下または消失
- 重度の小球性低色素性貧血と全身の鉄沈着症状
- 常染色体劣性遺伝疾患で乳児期から発症
病態・原因
トランスフェリン遺伝子(TF遺伝子)の変異により、鉄を運搬するトランスフェリンが産生されない。これにより鉄が血中で運搬されず、組織に異常沈着し、臓器障害や造血障害を引き起こす。
主症状・身体所見
乳児期より重度の小球性低色素性貧血が出現し、発育障害や易感染性を伴う。鉄沈着による肝腫大、心筋障害、内分泌障害、皮膚色素沈着なども認められる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血清トランスフェリン | 著明な低値または測定不能 | 決定的な診断所見 |
| 血清鉄・フェリチン | 著明な高値 | 組織鉄沈着を反映 |
| 血液像 | 小球性低色素性貧血 | 重度の貧血 |
| 遺伝子検査 | TF遺伝子変異 | 診断の確定に有用 |
血清トランスフェリンの欠如が診断の決め手となる。血清鉄・フェリチンは高値で、遺伝子解析によりTF遺伝子変異が確認される。肝MRIや心エコーで鉄沈着も評価される。
治療
- 第一選択:新鮮凍結血漿(FFP)投与によるトランスフェリン補充
- 補助療法:赤血球輸血、鉄キレート剤投与、臓器障害への対症療法
- 注意点:鉄過剰による臓器障害のモニタリングと管理が重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 鉄欠乏性貧血 | トランスフェリンは増加、フェリチン低値 | 血清鉄・フェリチン低値 |
| 鉄芽球性貧血 | 骨髄に環状鉄芽球、鉄沈着 | 血清トランスフェリン正常 |
| 慢性炎症による二次性貧血 | フェリチン高値、トランスフェリン低値 | 軽度の貧血、鉄沈着なし |
補足事項
本症は極めて稀な疾患であり、早期診断と適切な管理が予後改善に直結する。遺伝子カウンセリングも重要である。