過敏性腸症候群

概要

過敏性腸症候群(IBS)は、腹痛や腹部不快感とともに排便習慣の変化(下痢・便秘など)を慢性的に繰り返す機能性腸疾患である。器質的異常が認められず、ストレスや生活習慣、腸内環境の変化が発症に関与する。若年〜中年成人に多く、QOL低下の主因となる。

要点

  • 器質的異常がないにもかかわらず腹部症状が持続する
  • 排便異常(下痢・便秘・混合型)が主な症状
  • ストレスや心理的要因、腸内細菌叢の乱れが関与

病態・原因

腸管運動異常、知覚過敏、腸内細菌叢の異常、ストレスや精神的要因などが複合的に関与する。感染性腸炎後に発症する症例もあり、腸管の炎症や免疫応答の変化も示唆されている。

主症状・身体所見

反復する腹痛や腹部不快感、排便による症状の改善、便秘・下痢・便性状の異常などがみられる。腹部膨満感やガス貯留感も多いが、発熱や血便、体重減少は通常認めない。

検査・診断

検査所見補足
血液・便検査異常なし器質疾患除外目的
腹部画像検査異常なし腸管壁の肥厚や腫瘍性病変なし
大腸内視鏡検査正常器質的疾患の否定

Rome IV基準に基づき、腹痛・腹部不快感が3か月以上持続し、排便異常を伴うことを確認する。器質的疾患(炎症性腸疾患、腫瘍など)の除外が診断上重要である。

治療

  • 第一選択:生活指導(食事・運動・ストレス対策)、薬物療法(高分子重合体、消化管運動調整薬、抗コリン薬、下痢型にはロペラミド、便秘型には酸化マグネシウム等)
  • 補助療法:心理療法(認知行動療法)、プロバイオティクス、低FODMAP食
  • 注意点:重篤な器質疾患の除外、長期経過観察、薬剤副作用

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
潰瘍性大腸炎血便・発熱・体重減少を伴う内視鏡でびらん・潰瘍
感染性腸炎急性発症・発熱・血便便培養陽性、炎症所見
機能性ディスペプシア上腹部症状中心下部消化管症状なし

補足事項

近年、腸脳相関や腸内細菌叢の重要性が注目されている。診断や治療においては患者の心理社会的側面の評価も重要となる。

関連疾患