神経性過食症
概要
神経性過食症(bulimia nervosa)は、反復する過食エピソードと、それに続く自己誘発性嘔吐や下剤乱用などの不適切な代償行動を特徴とする摂食障害である。若年女性に多く、体重や体型に対する過度なこだわりが背景にある。身体合併症や精神症状を伴いやすい。
要点
- 過食と代償行動(嘔吐など)が繰り返される
- 体重や体型への過度な関心が根底に存在
- 電解質異常や消化管障害などの合併症に注意
病態・原因
体重や体型への強いこだわりや、ストレス、不安、自己評価の低さなど心理社会的要因が発症に関与する。遺伝的素因や家族歴、文化的背景もリスク因子となる。過食後の罪悪感や体重増加への恐怖から、嘔吐や下剤乱用などの代償行動が引き起こされる。
主症状・身体所見
繰り返す大量の過食と、その後の自己誘発性嘔吐や下剤・利尿薬乱用が主症状である。体重は正常範囲~やや増加傾向であることが多い。手背のRussell徴候(嘔吐による手背の擦過傷)、口腔内炎症、歯のエナメル質障害、唾液腺腫脹などがみられる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液生化学検査 | 低カリウム血症、代謝性アルカローシス | 嘔吐・下剤乱用による電解質異常 |
| 心電図 | 不整脈 | 低カリウム血症の影響 |
| 上部消化管内視鏡 | 食道炎、胃炎 | 嘔吐の繰り返しによる |
診断はDSM-5の基準に基づく。過食エピソードと代償行動が週1回以上、3か月以上持続することが必要。画像所見よりも臨床経過と精神症状の評価が重要となる。
治療
- 第一選択:認知行動療法(CBT)による心理社会的介入
- 補助療法:選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)など薬物療法
- 注意点:低カリウム血症等の身体合併症管理と再発予防
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 神経性食思不振症 | 著明な体重減少、無月経 | BMI低値、栄養障害が顕著 |
| 過敏性腸症候群 | 腹部症状主体、摂食障害なし | 精神症状や代償行動はみられない |
補足事項
過食症患者はうつ病や不安障害など他の精神疾患を合併しやすい。身体合併症の早期発見・治療が重要であり、医療チームによる多職種連携が望ましい。