身体表現性障害
概要
身体表現性障害は、医学的に説明できない身体症状が長期間にわたり持続し、日常生活に支障をきたす精神疾患である。患者は身体的訴えを繰り返すが、検査で明確な身体疾患は認められない。心理的要因が症状の発現や持続に関与している。
要点
- 明確な身体疾患がないにもかかわらず身体症状が持続する
- 症状は多彩で、複数臓器に及ぶことが多い
- 精神的ストレスや心理的葛藤が背景に存在する
病態・原因
心理的ストレスや葛藤が無意識に身体症状として表現される。発症には性格傾向、環境要因、過去の身体疾患経験などが関与することが多い。二次的利益(注目・休職など)が症状維持に関与する場合もある。
主症状・身体所見
頭痛、腹痛、倦怠感、しびれ、動悸など多様な身体症状がみられる。症状の訴えは具体的で生々しいが、診察や検査で一致する身体所見や異常がみられない。症状は慢性的で、しばしば医療機関を転々とする。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液・画像検査 | 異常なし | 身体疾患の除外目的 |
| 心理検査 | 心理的要因の示唆 | MMPIなどを参考にすることも |
| 面接評価 | 症状の多様性と持続 | 病歴聴取が極めて重要 |
症状が医学的に説明できないこと、長期にわたる多彩な身体症状、生活障害の存在が診断のポイントとなる。DSM-5では身体症状症(Somatic Symptom Disorder)として分類される。
治療
- 第一選択:支持的精神療法、認知行動療法
- 補助療法:抗うつ薬(SSRI等)、ストレス対処法指導
- 注意点:不要な検査・治療の反復を避ける、主治医の一元化
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 過敏性腸症候群 | 消化器症状が主でストレスと関連 | 内視鏡・血液検査で異常なし |
| 線維筋痛症 | 広範な疼痛と圧痛点 | 血液・画像検査で異常なし |
| うつ病 | 抑うつ気分や意欲低下が中心 | 精神症状が前景に出やすい |
補足事項
患者への説明や共感的態度が重要であり、症状の否定や「気のせい」といった対応は症状悪化の原因となる。慢性化しやすいため、長期的な関わりが必要となることが多い。