Wernicke脳症

概要

Wernicke脳症はビタミンB1(チアミン)欠乏により発症する急性の脳障害である。慢性的なアルコール多飲や栄養障害に伴い発症しやすく、意識障害、眼球運動障害、運動失調の三徴が特徴となる。早期治療が予後を左右する緊急疾患である。

要点

  • ビタミンB1欠乏が直接的な原因
  • 意識障害・眼球運動障害・運動失調の三徴が重要
  • 早期のチアミン投与が不可欠

病態・原因

慢性的なアルコール多飲、消化管疾患、悪性腫瘍、飢餓、過度の嘔吐や絶食などによるビタミンB1欠乏が主な原因となる。ビタミンB1は糖代謝に必須であり、欠乏すると中枢神経系のエネルギー代謝障害を来す。

主症状・身体所見

意識障害(せん妄、昏迷)、眼球運動障害(外眼筋麻痺、眼振)、運動失調(歩行障害、小脳失調)が三徴とされる。必ずしも全てが揃うとは限らず、軽度の記憶障害や構音障害を伴うこともある。

検査・診断

検査所見補足
血液検査ビタミンB1低値臨床症状と併せて評価
頭部MRI視床・乳頭体・中脳水道周囲の高信号FLAIR/T2強調像で特徴的

診断は臨床症状(三徴)とビタミンB1低値、MRI所見を組み合わせて行う。画像所見は特異的だが、早期には正常なこともあるため、疑えば治療を優先する。

治療

  • 第一選択:高用量ビタミンB1(チアミン)静脈投与
  • 補助療法:脱水・電解質異常の是正、栄養管理
  • 注意点:糖質投与前に必ずチアミン補充を行う

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
Korsakoff症候群慢性進行性、記憶障害と作話MRIで乳頭体萎縮
肝性脳症肝疾患既往、羽ばたき振戦血中アンモニア高値

補足事項

Korsakoff症候群はWernicke脳症の慢性期に移行した状態であり、不可逆的な記憶障害が主体となる。アルコール依存症患者や長期絶食患者では予防的チアミン投与が推奨される。

関連疾患