鉛中毒
概要
鉛中毒は鉛の摂取や吸入による慢性または急性の中毒症状を指し、神経系・消化器系・造血系など多臓器障害をきたす。産業現場や鉛を含む製品への曝露が主な原因であり、進行すると不可逆的な障害を残すことがある。
要点
- 神経症状(末梢神経障害・中枢神経障害)が特徴的
- 貧血や腹痛など造血・消化器症状も重要
- 診断には血中・尿中鉛濃度測定が必須
病態・原因
鉛は主に吸入や経口摂取で体内に取り込まれ、骨や臓器に沈着し慢性的な障害を引き起こす。産業的曝露(塗料、バッテリー、鉛管など)や鉛含有製品の誤用がリスク因子となる。鉛はヘム合成阻害や神経伝達阻害を介して多彩な症状を呈する。
主症状・身体所見
初期は倦怠感、腹痛、便秘、関節痛など非特異的症状が多い。進行例では鉛蒼線(歯肉)、末梢神経障害(垂れ手)、精神症状(認知障害、錯乱)、貧血、腎障害がみられる。小児では発達遅延や知能障害も重要。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血中・尿中鉛濃度 | 高値 | 診断の決め手 |
| 末梢血塗抹 | 鉛小体(basophilic stippling)など | 造血障害の証拠 |
| 腎機能検査 | 尿蛋白・BUN/Cr上昇 | 腎障害の評価 |
血中鉛濃度が一定値(例:成人で10μg/dL以上、小児で5μg/dL以上)を超えると診断される。腹部X線で鉛含有異物の確認ができる場合もある。臨床的には職業歴や曝露歴の聴取が重要。
治療
- 第一選択:キレート剤(エデト酸カルシウム二ナトリウムCaEDTA、D-ペニシラミンなど)
- 補助療法:曝露源の除去、対症療法(下剤、鎮痛薬など)
- 注意点:治療中の腎機能障害に注意、再曝露防止指導
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| ヒ素中毒 | 皮膚色素沈着・末梢神経障害 | 尿中ヒ素高値、Mees線 |
| 水銀中毒 | 振戦・口腔粘膜炎・精神症状 | 尿中水銀高値 |
| 鉄欠乏性貧血 | 鉛小体なし、消化器症状少ない | フェリチン低値、鉛濃度正常 |
補足事項
鉛中毒は慢性経過をとることが多く、曝露歴の把握と早期発見が重要である。小児や妊婦では特に神経発達への影響が深刻となるため、環境対策も重要視されている。