二硫化炭素中毒
概要
二硫化炭素中毒は有機溶剤である二硫化炭素(CS₂)の吸入や皮膚吸収によって発症する中毒性疾患である。主に神経系・循環器系への障害が特徴で、慢性暴露では精神・神経症状や動脈硬化を引き起こす。急性中毒では意識障害やけいれん、ショックなど重篤な症状を呈することもある。
要点
- 主に職業性曝露による慢性中毒が多い
- 精神・神経症状と循環器障害が中心
- 早期の曝露中止と対症療法が重要
病態・原因
二硫化炭素は主に工業現場で使用され、吸入や皮膚から体内に取り込まれる。有害代謝物が中枢・末梢神経系、血管内皮、肝臓などに障害を及ぼし、慢性では動脈硬化・神経障害、急性では中枢抑制や循環不全を引き起こす。
主症状・身体所見
初期には頭痛、めまい、倦怠感、情緒不安、記憶障害などの精神・神経症状が現れる。進行すると多発神経炎、運動失調、感覚障害、さらには高血圧や動脈硬化、心筋障害といった循環器症状もみられる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液・尿中二硫化炭素代謝物測定 | 代謝物の上昇 | 曝露評価・診断補助 |
| 神経伝導速度検査 | 末梢神経伝導遅延 | 多発神経炎の評価 |
| 心電図・心エコー | 不整脈・心筋障害 | 循環器障害の確認 |
血中・尿中の代謝物測定が曝露評価に有用であり、臨床症状と職業歴から診断する。神経学的評価や循環器系検査も重要。画像診断では特異的異常は乏しい。
治療
- 第一選択:曝露中止と新鮮空気への移動
- 補助療法:対症療法(酸素投与、循環管理、症状に応じた支持療法)
- 注意点:早期対応と長期フォロー、再曝露防止
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| トルエン中毒 | 精神症状中心、肝障害強い | 尿中馬尿酸上昇 |
| 一酸化炭素中毒 | 頭痛・意識障害・紅潮 | 血中COHb上昇 |
| 鉛中毒 | 貧血・腹部症状・神経障害 | 血中鉛濃度上昇 |
補足事項
慢性中毒では動脈硬化や精神症状が不可逆となる場合があるため、定期健康診断や曝露環境の改善が重要。日本では法規制が厳格化され発症頻度は減少傾向。