クロム中毒
概要
クロム中毒は、クロム化合物の急性または慢性曝露によって引き起こされる中毒状態である。主に工業現場での吸入や経口摂取、皮膚接触が原因となり、多臓器障害を呈することがある。急性では消化管障害、慢性では呼吸器障害や皮膚症状が中心となる。
要点
- 主に六価クロム化合物の曝露が重篤な中毒を引き起こす
- 消化管・呼吸器・腎障害など多臓器に影響を及ぼす
- 職業性曝露が多く、予防と早期対応が重要
病態・原因
クロム中毒は、主に六価クロム(Cr6+)化合物の吸入、経口摂取、皮膚吸収によって発症する。工業用クロム化合物(メッキ、染料、皮なめし等)への職業的曝露が主なリスク因子となる。六価クロムは強い酸化作用を持ち、細胞障害やDNA損傷を引き起こす。
主症状・身体所見
急性中毒では、激しい腹痛、嘔吐、下痢、消化管出血、腎障害、ショックなどを認める。慢性曝露では、鼻中隔穿孔、鼻出血、慢性咳嗽、呼吸困難、皮膚潰瘍(クロム潰瘍)などがみられる。重症例では多臓器不全に至ることがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血清クロム濃度 | 上昇 | 曝露量の指標 |
| 尿中クロム濃度 | 上昇 | 慢性曝露評価に有用 |
| 腎機能検査 | BUN/Cr上昇 | 腎障害の評価 |
| 肝機能検査 | AST/ALT上昇 | 多臓器障害の評価 |
急性中毒では臨床症状と曝露歴が診断の鍵となる。血清・尿中クロム濃度の測定が有用だが、症状出現前の測定は困難な場合もある。鼻中隔穿孔や皮膚潰瘍は慢性曝露の特徴的所見である。
治療
- 第一選択:曝露源からの隔離、胃洗浄・活性炭投与(経口摂取時)、支持療法
- 補助療法:キレート剤(ジメルカプロール、EDTA等)の投与、腎障害時の透析
- 注意点:早期対応と多臓器管理、職業衛生対策の徹底
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 鉛中毒 | 貧血、鉛線、末梢神経障害 | 血中鉛濃度上昇 |
| 水銀中毒 | 精神症状、振戦、口腔炎 | 血中・尿中水銀上昇 |
| ヒ素中毒 | 皮膚色素沈着、末梢神経障害 | 尿中ヒ素上昇 |
補足事項
クロム中毒は、職業性曝露の予防が最も重要であり、適切な個人防護具の着用や作業環境の管理が不可欠である。六価クロムは発癌性も指摘されており、長期管理と健康監視が求められる。