機能性ディスペプシア
概要
機能性ディスペプシアは、明らかな器質的疾患が認められないにもかかわらず、上腹部の不快感や痛み、膨満感、早期飽満感などの症状が慢性的に持続する疾患である。消化管運動異常や知覚過敏、心理的要因など多因子が関与する。消化性潰瘍や胃癌などの除外診断が重要となる。
要点
- 器質的疾患がないにもかかわらず慢性的な上腹部症状を呈する
- 消化管運動障害や知覚過敏、ストレスが発症に関与
- 除外診断が必須であり、治療は生活指導と薬物療法が中心
病態・原因
胃や十二指腸の運動機能障害、内臓知覚過敏、ストレスなど心理的要因、ヘリコバクター・ピロリ感染などが複雑に関与する。器質的疾患や代謝異常が認められないことが診断の前提となる。
主症状・身体所見
上腹部の痛みや灼熱感、早期飽満感、食後膨満感、悪心などが主症状で、身体所見は乏しい。症状は食事やストレスで増悪しやすいが、体重減少や出血などの警告症状は通常みられない。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 上部消化管内視鏡 | 器質的異常なし | 消化性潰瘍や腫瘍の除外 |
| 血液検査 | 炎症・貧血などの異常なし | 他疾患の除外 |
| ピロリ菌検査 | 陽性例もあるが、陰性例も多い | 治療対象の判断に重要 |
診断はRome基準(Rome IVなど)に基づき、症状が3か月以上持続し、6か月以上前から存在し、かつ器質的疾患が除外されていることが条件となる。画像検査や内視鏡で異常がないことが必須。
治療
- 第一選択:生活指導、H2ブロッカーやPPI、プロキネティクス
- 補助療法:ピロリ除菌療法(陽性例)、抗不安薬、漢方薬
- 注意点:警告症状(体重減少、出血など)があれば精査を徹底
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 胃潰瘍 | 器質的潰瘍、出血・穿孔リスク | 内視鏡で潰瘍を認める |
| 胃食道逆流症 | 胸焼け・呑酸が主、夜間増悪 | 内視鏡で食道炎所見 |
| 過敏性腸症候群 | 腹痛と排便異常が主 | 下部消化管症状が主体 |
補足事項
ストレスや生活習慣の改善が症状緩和に有効なことが多い。近年、腸脳相関や微生物叢の関与も注目されている。薬剤反応性が低い場合は心理的介入も考慮する。