家族性腺腫性ポリポーシス
概要
家族性腺腫性ポリポーシス(FAP)は、大腸に無数の腺腫性ポリープが発生する常染色体優性遺伝性疾患である。APC遺伝子変異が原因で、若年で大腸癌を高率に発症する。適切な管理がなければ大腸癌による死亡リスクが著しく高い。
要点
- APC遺伝子変異による常染色体優性遺伝疾患
- 大腸に多数の腺腫性ポリープと高率の大腸癌発症
- 早期診断・外科的治療が生命予後を大きく左右する
病態・原因
APC遺伝子の生殖細胞系列変異が主因であり、常染色体優性遺伝形式をとる。APC蛋白の機能喪失により細胞増殖が制御不能となり、腺腫性ポリープが大腸全域に多数形成される。
主症状・身体所見
思春期から若年成人にかけて下痢、血便、腹痛などの消化器症状が出現する。しばしば無症状で発見されるが、進行すると大腸癌や消化管出血、腸閉塞をきたすこともある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 大腸内視鏡検査 | 全大腸に100個以上の腺腫性ポリープ | 形態・分布・数で診断に寄与 |
| 遺伝子検査 | APC遺伝子の病的変異検出 | 家族歴や確定診断のために有用 |
| 生検組織診断 | 腺腫の組織像 | 悪性化の有無も評価 |
大腸全域に100個以上の腺腫性ポリープを認め、家族歴やAPC遺伝子変異の確認が診断基準となる。画像検査で他臓器の合併症(デスモイド腫瘍など)も評価する。
治療
- 第一選択:予防的大腸全摘術(回腸嚢肛門吻合術など)
- 補助療法:定期的な内視鏡サーベイランス、上部消化管検査、遺伝カウンセリング
- 注意点:術後の生活指導、他臓器腫瘍の発症リスク管理
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Peutz-Jeghers症候群 | 粘膜メラニン沈着・過誤腫性ポリープ | ポリープの組織型・遺伝子異常が異なる |
| 若年性ポリポーシス | 若年発症・過誤腫性ポリープ | ポリープの組織像・家族歴の違い |
| Cronkhite-Canada症候群 | 非遺伝性・皮膚症状・蛋白漏出性腸症 | 遺伝子異常なく、全身症状が特徴 |
補足事項
FAP患者では大腸以外にも胃・十二指腸ポリープやデスモイド腫瘍、骨腫、網膜色素上皮肥厚などの合併症がみられる。家族歴が重要であり、血縁者へのスクリーニングも推奨される。