回虫症
概要
回虫症はAscaris lumbricoides(ヒト回虫)による寄生虫感染症で、主に経口的に虫卵を摂取することで発症する。世界的にみて広く分布し、衛生環境の悪い地域で多発する。多くは無症状だが、腸閉塞や肺移行期の呼吸器症状を呈することがある。
要点
- ヒト回虫の経口感染による消化管寄生虫症
- 多くは無症状だが、腸閉塞や肺症状など重篤例も
- 衛生環境の改善と駆虫薬投与が予防・治療の基本
病態・原因
回虫症はヒト回虫の虫卵を経口摂取することで感染し、幼虫が腸管から血流・肺を経て再び消化管に戻り成虫となる。発症リスクは不衛生な飲食物摂取や糞便汚染環境で高まる。
主症状・身体所見
多くは無症状だが、虫体数が多い場合は腹痛、悪心、嘔吐、下痢などの消化器症状や、腸閉塞をきたすことがある。幼虫移行期には咳嗽、喘鳴、発熱などの呼吸器症状(Löffler症候群)を呈することもある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 糞便検査 | 回虫卵の検出 | 感染確定診断、複数回の検査が有用 |
| 腹部X線・超音波 | 腸管内の虫体、腸閉塞像 | 虫体の塊や腸管拡張の評価 |
| 血液検査 | 好酸球増多 | 幼虫移行期にみられることがある |
糞便中の虫卵検出が確定診断となる。画像検査では腸閉塞や虫体の塊を確認できる場合がある。肺移行期には好酸球増多や一過性肺浸潤影を認めることもある。
治療
- 第一選択:駆虫薬(メベンダゾール、アルベンダゾール)
- 補助療法:腸閉塞時は外科的処置や支持療法
- 注意点:再感染予防のため衛生指導と家族・集団単位での治療
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 蟯虫症 | 肛門周囲の掻痒、夜間悪化 | セロハンテープ法で虫卵検出 |
| 鉤虫症 | 貧血、消化器症状、皮膚掻痒 | 糞便中の鉤虫卵検出 |
| アニサキス | 急性腹痛、海産魚摂取歴 | 内視鏡で虫体確認 |
補足事項
日本では衛生環境の改善により発症頻度は著しく減少したが、世界的には依然として重要な寄生虫症である。近年は輸入感染例や集団感染にも注意が必要。