糞線虫症

概要

糞線虫症はStrongyloides stercoralisによる寄生虫感染症で、主に熱帯・亜熱帯地域に分布する。自家感染により慢性化しやすく、免疫不全状態では重篤な播種感染を起こすことがある。消化器症状や皮膚症状が主体だが、重症例では多臓器障害も生じうる。

要点

  • Strongyloides stercoralisによる腸管寄生虫症
  • 自家感染と播種感染が特徴的
  • 免疫抑制下で重症化・致死的経過をとることがある

病態・原因

経皮的に侵入した糞線虫幼虫が血流や気道を経て消化管に定着し、腸管内で成虫化する。自家感染によって慢性化し、ステロイド投与など免疫抑制時に播種感染(hyperinfection)をきたす。土壌汚染や衛生環境不良がリスク因子となる。

主症状・身体所見

腹痛、下痢、悪心・嘔吐などの消化器症状が多く、慢性経過では無症状も多い。皮膚の移動性紅斑(larva currens)が特徴的。播種感染時には発熱、呼吸困難、敗血症、多臓器不全など重篤な全身症状を呈する。

検査・診断

検査所見補足
便検査幼虫の検出繰り返し検査で感度向上
血液検査好酸球増多播種感染時は減少することも
髄液・喀痰検査幼虫の検出(播種時)重症例で施行
血清抗体検査抗Strongyloides抗体陽性補助診断、偽陽性に注意

便中幼虫検出が診断の基本だが、1回の検査で検出率は低く、反復検査が推奨される。播種感染例では血液や髄液、喀痰からも幼虫が検出される。血清抗体検査は補助的に用いる。

治療

  • 第一選択:イベルメクチン内服
  • 補助療法:アルベンダゾールなど他の駆虫薬
  • 注意点:免疫抑制中は治療前にスクリーニング・再発予防

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
回虫症腸閉塞や肺移動期症状が主体便中に回虫卵検出
アメーバ赤痢血性下痢・肝膿瘍など便中にアメーバ検出
鞭虫症無症状〜慢性下痢、貧血便中に鞭虫卵検出

補足事項

日本国内でも高齢者施設や免疫抑制患者で散発例が報告されている。ステロイド投与前のスクリーニングが重要。播種感染時は致死率が高く、早期診断・治療が生命予後を左右する。

関連疾患