旋毛虫症
概要
旋毛虫症はTrichinella属線虫の摂取による寄生虫感染症であり、主に加熱不十分な豚肉や野生動物肉の摂取が原因となる。消化管症状と筋肉症状が特徴的で、重症例では全身症状も認められる。世界的には稀だが、発生時は集団感染となることが多い。
要点
- 生肉摂取歴が診断の手がかりとなる
- 消化器症状と筋肉痛・発熱の二相性経過
- 好酸球増多と血清抗体が診断に有用
病態・原因
旋毛虫(Trichinella spiralisなど)の幼虫が加熱不十分な肉類から体内に侵入し、腸管で成虫化した後、幼虫が筋肉組織に移行し嚢胞を形成する。豚肉やイノシシ肉などの摂取が主なリスク因子である。
主症状・身体所見
初期は下痢、腹痛、嘔吐などの消化器症状が現れる。1〜2週間後から発熱、筋肉痛、眼瞼浮腫、発疹、結膜充血などの全身症状が出現する。重症例では心筋炎や中枢神経症状もみられる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液検査 | 好酸球増多、筋酵素上昇 | CK、LDH、ASTの上昇がみられる |
| 血清抗体検査 | Trichinella抗体陽性 | 発症2週以降で陽性となる |
| 筋生検 | 幼虫の嚢胞確認 | 確定診断に有用 |
生肉摂取歴の確認が重要であり、好酸球増多や筋酵素上昇が診断の手がかりとなる。血清抗体は発症2週以降で陽性となるため、早期診断には筋生検が役立つ。画像検査は補助的に用いられる。
治療
- 第一選択:メベンダゾールまたはアルベンダゾール投与
- 補助療法:対症療法(解熱鎮痛薬、補液など)
- 注意点:重症例では副腎皮質ステロイド併用を検討
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| アニサキス | 急性腹痛・蕁麻疹・筋肉症状なし | 好酸球増多は稀、筋酵素正常 |
| トキソプラズマ症 | 筋肉痛は軽度・リンパ節腫脹主体 | トキソプラズマ抗体陽性 |
| 回虫症 | 腸管症状主体・筋肉症状まれ | 幼虫の筋肉移行なし |
補足事項
日本では稀な疾患だが、ジビエ肉の流通増加により注意が必要。集団発生例では食品衛生管理の徹底が重要となる。