鞭虫症
概要
鞭虫症は寄生虫である鞭虫(Trichuris trichiura)が主に大腸に寄生する感染症で、糞口感染によりヒトに発症する。熱帯・亜熱帯地域で多く見られ、衛生環境の悪い地域で流行しやすい。感染者の多くは無症状だが、重症例では消化器症状や貧血を呈する。
要点
- 鞭虫は主に大腸に寄生し、糞口感染で拡がる
- 多くは無症状だが、腹痛・下痢・貧血を来すことがある
- 治療は駆虫薬投与が基本で、衛生環境の改善も重要
病態・原因
鞭虫の卵が経口的に摂取されることで感染が成立し、孵化した幼虫は大腸粘膜に侵入して成虫となる。主なリスク因子は衛生状態の悪い地域での生活や汚染された土壌・水の摂取である。
主症状・身体所見
多くは無症状だが、感染が高度になると腹痛、下痢、粘血便、食欲不振、体重減少、鉄欠乏性貧血などを認める。小児では発育障害や直腸脱を生じることもある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 便検査 | 鞭虫卵の検出 | 卵はレモン型で両端に栓がある |
| 大腸内視鏡 | 大腸粘膜に白色細長虫体 | 重症例で虫体の直接観察が可能 |
便中の卵の検出が診断の基本であり、形態学的特徴により他の寄生虫卵と鑑別する。内視鏡で虫体を確認することもあるが、必須ではない。
治療
- 第一選択:メベンダゾール、アルベンダゾールなどの駆虫薬投与
- 補助療法:貧血や栄養障害があれば補正、衛生指導
- 注意点:再感染予防のため衛生環境の改善が不可欠
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 回虫症 | 小腸寄生が主、移動性腹痛 | 便中の回虫卵、虫体の形態が異なる |
| アメーバ赤痢 | 血便・粘液便、肝膿瘍合併 | 便中に赤痢アメーバの検出 |
| 蟯虫症 | 肛門周囲の掻痒感が強い | セロテープ法で蟯虫卵検出 |
補足事項
大規模な集団感染例では衛生指導や集団駆虫が重要となる。薬剤耐性の報告は少ないが、再感染例では複数回の治療が必要となる場合がある。