腎症候性出血熱

概要

腎症候性出血熱(Hemorrhagic Fever with Renal Syndrome, HFRS)は、ハンタウイルス属に分類されるウイルスによる人獣共通感染症で、発熱・出血傾向・腎障害を主徴とする。アジアやヨーロッパで流行がみられ、重症例では致死的となることもある。主な感染経路はネズミなどの齧歯類の排泄物を介する吸入感染である。

要点

  • ハンタウイルスによる急性感染症で腎障害と出血傾向が特徴
  • 齧歯類の排泄物を介した吸入感染が主な伝播経路
  • 重症例ではショックや急性腎不全に至ることがある

病態・原因

ハンタウイルス属ウイルスへの感染により、全身の血管内皮細胞障害と毛細血管透過性亢進が生じる。これにより出血傾向とともに腎臓に浮腫・壊死・炎症が引き起こされる。リスク因子は齧歯類の生息地域での曝露歴や農作業・林業などが挙げられる。

主症状・身体所見

突然の高熱、頭痛、筋肉痛、腰痛、悪心・嘔吐などの全身症状に加え、結膜充血、点状出血、皮下出血などの出血傾向がみられる。尿量減少や浮腫、腎部叩打痛など腎障害を示す徴候も認められる。

検査・診断

検査所見補足
血液検査血小板減少、腎機能障害(BUN・Cr上昇)、白血球増加出血傾向・腎障害の評価
尿検査蛋白尿、血尿、円柱尿腎障害の指標
血清学的検査ハンタウイルス抗体陽性急性期・回復期ペア血清

血液・尿検査で腎障害と出血傾向を確認し、血清学的にハンタウイルス抗体の上昇を証明する。流行地での曝露歴や臨床経過も重要な診断根拠となる。画像検査(腎エコーなど)は腎腫大や腎皮質浮腫を補助的に評価する。

治療

  • 第一選択:対症療法(輸液・電解質管理・腎不全時透析)
  • 補助療法:出血管理、ショック対策、感染管理
  • 注意点:腎不全・ショックの早期発見と適切な支持療法が予後を左右する

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
ウイルス性出血熱腎障害が目立たない腎機能正常、出血傾向主体
急性腎障害出血傾向が乏しい血小板数正常、出血所見なし
溶血性尿毒症症候群小児に多く溶血性貧血・血小板減少・腎障害溶血所見明瞭、腸管感染の既往あり

補足事項

ハンタウイルスの型により重症度や流行地域が異なる(韓国型、中国型、欧州型など)。予防には齧歯類との接触回避や環境衛生の改善が重要である。日本国内では稀な疾患だが、輸入症例や流行地域への渡航歴のある患者では鑑別に挙げる必要がある。

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