筋萎縮性側索硬化症
概要
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動ニューロンの変性・脱落により進行性の筋力低下と筋萎縮をきたす神経変性疾患である。上位・下位運動ニューロンの両方が障害されることが特徴で、呼吸筋麻痺による呼吸不全が主な死因となる。発症年齢は中高年に多く、原因の多くは不明だが、遺伝性も一部存在する。
要点
- 上位・下位運動ニューロン障害が混在する進行性疾患
- 四肢筋力低下・筋萎縮・球麻痺・呼吸筋障害を呈する
- 治療は対症療法が中心で、予後は不良
病態・原因
ALSは脳および脊髄の運動ニューロンが選択的に変性・消失することで発症する。90%以上は孤発性で、約5〜10%は遺伝性(SOD1、C9orf72遺伝子変異など)が関与する。環境要因や加齢もリスク因子とされるが、詳細な発症機序は未解明である。
主症状・身体所見
初期には手指の筋萎縮や筋力低下、筋束攣縮がみられ、徐々に四肢・体幹・呼吸筋に進展する。上位運動ニューロン障害による痙縮や腱反射亢進、下位運動ニューロン障害による筋萎縮・筋力低下が混在する。球麻痺(構音障害・嚥下障害)も特徴的で、感覚障害や膀胱直腸障害は基本的にみられない。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 針筋電図(EMG) | 持続的な筋線維自発放電、脱神経電位 | 下位運動ニューロン障害の証明 |
| MRI(脳・脊髄) | 特異的異常なし(除外診断) | 他疾患除外のため施行 |
| 神経伝導検査 | 運動神経伝導速度低下、感覚神経は保たれる | 感覚神経障害は基本的に認めない |
診断は上位・下位運動ニューロン障害の臨床的証拠と、他疾患(頚髄症、筋疾患、神経筋接合部疾患など)の除外により行う。El Escorial基準が国際的な診断基準として用いられる。
治療
- 第一選択:リルゾール投与(グルタミン酸放出抑制薬)
- 補助療法:呼吸管理(NPPV/気管切開)、栄養管理(胃瘻造設)、リハビリテーション
- 注意点:感染予防、適切な緩和ケア、意思決定支援
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 多発性硬化症 | 感覚障害・視力障害・再発寛解型経過 | MRIで脱髄巣、髄液検査でオリゴクローナルバンド |
| 脊髄性筋萎縮症 | 若年発症・遺伝性・下位運動ニューロン障害のみ | 上位運動ニューロン障害なし、遺伝子検査陽性 |
| 頸椎症性脊髄症 | 感覚障害・膀胱直腸障害を伴う | MRIで脊髄圧迫所見 |
補足事項
認知機能障害(前頭側頭型認知症の合併)を認めることがあり、臨床的多様性が存在する。新規治療薬(エダラボンなど)の適応や緩和ケアの重要性が増している。