HAM
概要
HAM(HTLV-1関連脊髄症)は、ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)感染によって生じる慢性進行性脊髄炎である。中年以降の女性に多く、下肢筋力低下や膀胱直腸障害を主症状とする。進行性だが、発症から進行までの速度は比較的緩徐である。
要点
- HTLV-1ウイルス感染が原因の慢性脊髄炎
- 下肢障害や膀胱直腸障害が進行性に出現
- 髄液検査・抗体検査で診断確定
病態・原因
HAMはHTLV-1ウイルス感染により、主に胸髄以下の脊髄に慢性炎症が生じることで発症する。ウイルスに対する免疫応答が持続的に脊髄組織を障害し、脱髄や軸索変性が進行する。感染経路は母子感染、性交渉、輸血などがある。
主症状・身体所見
発症初期から両下肢の筋力低下や痙縮、歩行障害がみられる。膀胱直腸障害(尿失禁・排尿困難・便秘)も高頻度で出現する。感覚障害や腱反射亢進、バビンスキー徴候陽性などの錐体路徴候が特徴的である。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血清・髄液HTLV-1抗体 | 陽性 | 抗体価上昇が診断の決め手 |
| MRI脊髄 | 軽度の萎縮・高信号域 | 主に胸髄レベルで変化が目立つ |
| 髄液検査 | 軽度細胞増多・蛋白上昇 | 炎症所見を示す |
血清および髄液でHTLV-1抗体陽性が診断に必須。MRIでは脊髄萎縮やT2強調画像で高信号域がみられることがある。臨床症状と検査所見の組み合わせで診断する。
治療
- 第一選択:副腎皮質ステロイドのパルス療法または内服
- 補助療法:リハビリテーション、対症療法(膀胱直腸障害管理など)
- 注意点:進行抑制が主目的で根治療法は存在しない
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 多発性硬化症 | 再発寛解型・中枢神経多発病変 | オリゴクローナルバンド陽性、脳病変 |
| 筋萎縮性側索硬化症 | 上下位運動ニューロン障害・感覚障害なし | 電気生理検査で脱神経所見、抗体陰性 |
補足事項
HAMは日本をはじめとしたHTLV-1流行地域で多くみられ、進行速度は個人差が大きい。発症予防にはHTLV-1感染対策が重要であり、母乳感染予防や献血スクリーニングが行われている。