MELAS
概要
MELAS(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、一過性脳卒中様発作)は、ミトコンドリアDNAの変異による多臓器障害を呈する遺伝性疾患である。小児期から若年成人期に発症し、中枢神経系と筋系を主に侵す。発作性の脳卒中様症状と進行性の筋障害が特徴的。
要点
- ミトコンドリアDNA変異による多臓器障害
- 脳卒中様発作と乳酸アシドーシスが特徴
- 小児~若年成人期に発症し進行性
病態・原因
ミトコンドリアDNAの3243A>G変異が最も多く、電子伝達系障害によりエネルギー産生が低下する。母系遺伝形式を示し、エネルギー需要の高い臓器に障害を生じやすい。乳酸アシドーシスや組織の虚血様変化が発症機序に関与する。
主症状・身体所見
反復する一過性脳卒中様発作(てんかんや片頭痛様発作を含む)、進行性筋力低下、易疲労感、精神発達遅滞、感音難聴、糖尿病など多彩な症状を呈する。脳卒中様発作は皮質盲や失語など局所神経症状を伴うことが多い。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液・髄液乳酸 | 高値 | 乳酸アシドーシスの証明 |
| MRI脳 | 皮質・皮質下の高信号域 | 血管支配域非依存性の病変 |
| 筋生検 | 赤色ぼろ線維 | ゴモリ染色で確認 |
| ミトコンドリアDNA解析 | 3243A>G変異 | 確定診断に有用 |
脳MRIでは血管支配域に一致しない皮質・皮質下の高信号病変を認める。筋生検で赤色ぼろ線維が特徴的。血液・髄液乳酸値の上昇、ミトコンドリアDNA解析での変異検出が診断の決め手となる。
治療
- 第一選択:ビタミン類(コエンザイムQ10、L-アルギニン、L-シトルリン等)の補充
- 補助療法:抗てんかん薬(バルプロ酸は避ける)、理学療法、糖尿病管理
- 注意点:バルプロ酸やメトホルミンは禁忌、感染症や代謝ストレスの回避
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| MERRF | ミオクローヌスてんかん優位 | 乳酸上昇、異なるmtDNA変異 |
| 脳梗塞 | 血管支配域に一致 | 血管造影で閉塞確認 |
| Leigh症候群 | 乳児期発症、眼球運動障害 | MRIで基底核・脳幹病変 |
補足事項
MELASは進行性であり、症状の多様性が診断の遅れにつながることがある。治療は対症的で根治療法は存在しないが、早期診断と代謝ストレスの管理が予後改善に重要。