重症筋無力症
概要
重症筋無力症は自己免疫機序により神経筋接合部のアセチルコリン受容体が障害され、筋力低下と易疲労性を主徴とする疾患。症状は日内変動し、眼筋から全身筋に波及することが多い。治療により多くは寛解や症状コントロールが可能。
要点
- 神経筋接合部の自己免疫性障害による可逆的筋力低下
- 眼筋症状から全身筋症状へ進展することが多い
- 抗コリンエステラーゼ薬・免疫療法・胸腺摘除が治療の中心
病態・原因
自己抗体(主に抗アセチルコリン受容体抗体)が神経筋接合部の受容体を障害し、神経から筋への興奮伝達が阻害される。胸腺異常(過形成や腫瘍)がしばしば関与し、若年女性や高齢男性に多い。
主症状・身体所見
眼瞼下垂や複視などの眼筋症状が初発しやすく、進行すると嚥下障害、構音障害、四肢筋力低下、呼吸筋麻痺など全身症状を呈する。症状は運動後や夕方に増悪し、休息で改善する日内変動が特徴。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血清抗アセチルコリン受容体抗体 | 陽性 | 約80%で陽性、診断的価値高い |
| テンシロンテスト | 一過性筋力改善 | コリンエステラーゼ阻害薬投与による |
| 反復神経刺激検査 | 漸減現象 | 神経筋伝達障害を示唆 |
| 胸部CT/MRI | 胸腺異常 | 胸腺腫や過形成の評価 |
診断は臨床症状、抗体検査、テンシロンテスト、電気生理学的検査を組み合わせて行う。胸腺腫の有無は治療方針に影響するため画像診断が重要。
治療
- 第一選択:抗コリンエステラーゼ薬(ピリドスチグミンなど)
- 補助療法:副腎皮質ステロイド、免疫抑制薬、血漿交換、免疫グロブリン静注
- 注意点:呼吸筋麻痺時は人工呼吸管理、胸腺腫合併例では胸腺摘除
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Lambert-Eaton症候群 | 近位筋優位、腱反射減弱、悪性腫瘍合併多い | 抗VGCC抗体陽性、反復刺激で増強現象 |
| 筋萎縮性側索硬化症 | 上下位運動ニューロン障害徴候 | 筋電図で脱神経所見、抗体陰性 |
補足事項
小児や妊娠女性、高齢者では症状や治療反応が異なることがある。薬剤性増悪(特に一部抗菌薬や筋弛緩薬)に注意。近年、抗MuSK抗体陽性例や難治例への新規治療法も開発されている。