ACTH単独欠損症
概要
ACTH単独欠損症は、下垂体前葉から分泌される副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)のみが選択的に欠損する稀な疾患である。副腎皮質ホルモンの分泌低下による症状が主体となるが、他の下垂体ホルモンは正常である点が特徴である。
要点
- ACTHのみが選択的に分泌低下する下垂体疾患
- 副腎皮質機能低下症状が中心で、他の下垂体ホルモンは正常
- 原因は特発性、自己免疫性、外傷、腫瘍、炎症など多様
病態・原因
下垂体前葉のACTH産生細胞(コルチコトロープ)の機能障害や消失によってACTHが選択的に分泌されなくなる。原因は特発性が多いが、自己免疫、下垂体腫瘍、頭部外傷、リンパ球性下垂体炎なども関与する。
主症状・身体所見
慢性的な全身倦怠感、易疲労感、食欲不振、体重減少、低血圧、低血糖、悪心・嘔吐などがみられる。色素沈着はみられない点がAddison病との鑑別ポイントとなる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血中ACTH | 著明な低値 | 他の下垂体ホルモンは正常 |
| 血中コルチゾール | 低値 | 早朝空腹時採血で評価 |
| インスリン低血糖試験 | コルチゾール反応の欠如 | 下垂体性ACTH分泌障害の確認 |
ACTH単独欠損症の診断は、ACTHとコルチゾールの低値、他の下垂体ホルモンの正常、画像検査で明らかな腫瘍性病変の除外により行う。MRIで下垂体の形態異常や炎症の有無も評価する。
治療
- 第一選択:ヒドロコルチゾンなどのグルココルチコイド補充療法
- 補助療法:ストレス時の増量指導、感染予防、教育
- 注意点:鉱質コルチコイド補充は不要、急性副腎不全予防が重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Addison病 | 色素沈着あり、鉱質コルチコイドも低下 | レニン・アルドステロンも低下 |
| 汎下垂体機能低下症 | 他の下垂体ホルモンも低下 | TSH, LH, FSH, GH等も低下 |
| 二次性副腎皮質機能低下症 | ACTH低値、色素沈着なし | 他の下垂体ホルモン障害を伴うことも |
補足事項
小児例では低血糖発作が初発となることが多い。ストレス時(感染、手術、外傷など)は補充量を増やす必要がある。長期予後は良好だが、急性副腎不全発症に注意する。