リンパ球性下垂体前葉炎
概要
リンパ球性下垂体前葉炎は、自己免疫機序により下垂体前葉にリンパ球浸潤が生じる稀な炎症性疾患である。主に産褥期女性に発症し、急性または亜急性に下垂体機能低下症を呈する。MRIで下垂体腫大や造影効果を認めることが多い。
要点
- 産褥期女性に好発し、急性発症の下垂体機能低下を示す
- MRIで下垂体腫大や造影効果が特徴的
- ステロイド治療が有効な場合が多い
病態・原因
自己免疫反応により下垂体前葉組織へリンパ球が浸潤し、炎症と組織障害を引き起こす。産褥期の女性に多く、妊娠・分娩に伴う免疫変化が発症に関与すると考えられている。他の自己免疫疾患との合併もみられる。
主症状・身体所見
頭痛や視野障害、倦怠感、無月経、乳汁分泌低下など下垂体機能低下症状が主体となる。急性発症例では発熱や意識障害を伴うこともある。視神経圧迫による視力障害がみられる場合もある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 下垂体ホルモン検査 | 各種下垂体前葉ホルモン低下 | 汎下垂体機能低下症の確認 |
| MRI | 下垂体腫大、造影効果増強 | 均一な腫大、茎の肥厚も |
| 血液検査 | 自己抗体陽性例あり | 他自己免疫疾患の合併確認 |
MRIによる下垂体腫大・造影効果や茎の肥厚が診断の手がかりとなる。組織診断はまれだが、リンパ球浸潤像が特徴的。鑑別には腫瘍や他の炎症性疾患の除外が必要。
治療
- 第一選択:副腎皮質ステロイド投与
- 補助療法:ホルモン補充療法(甲状腺・副腎皮質・性腺ホルモン)
- 注意点:再発例や重症例は長期経過観察と自己免疫疾患の合併に注意
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 下垂体前葉腺腫 | ゆっくり進行、腫瘍性増大 | MRIで腫瘤性病変、ホルモン過剰分泌例 |
| Sheehan症候群 | 分娩時大量出血の既往 | MRIで下垂体萎縮、急性発症・出血既往 |
補足事項
近年、IgG4関連下垂体炎との鑑別も重要視されている。ステロイド反応性が高いが、再発や慢性化例も報告されているため、定期的な画像・ホルモン評価が推奨される。