進行性核上性麻痺
概要
進行性核上性麻痺(PSP)は、眼球運動障害や姿勢保持障害、認知機能障害を特徴とする神経変性疾患。中脳を中心とした神経細胞の変性・脱落およびタウ蛋白の異常蓄積が主な病理学的所見である。中高年以降に発症し、進行性に症状が悪化する。
要点
- 垂直性眼球運動障害と姿勢保持障害が早期から出現
- 認知機能障害や構音障害も高頻度にみられる
- タウオパチーの一つであり、根本的治療法は存在しない
病態・原因
進行性核上性麻痺は、主に中脳・大脳基底核を中心とした神経細胞の変性・脱落と、異常リン酸化タウ蛋白の蓄積によるタウオパチーで発症する。発症リスクには加齢が関与し、遺伝的要因は希である。
主症状・身体所見
初期から垂直性(特に下方)眼球運動障害がみられ、早期に後方への転倒を繰り返す姿勢保持障害が特徴的である。構音障害、嚥下障害、認知機能障害、仮面様顔貌、筋強剛も認められる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 頭部MRI | 中脳被蓋の萎縮 | ハチドリサイン(hummingbird sign) |
| SPECT/PET | 前頭葉・中脳の低集積 | 鑑別に有用 |
| 神経学的診察 | 垂直性眼球運動障害・姿勢障害 | 臨床診断の基礎 |
臨床診断は、早期からの垂直性眼球運動障害、姿勢保持障害、認知機能障害の組み合わせで行う。画像では中脳萎縮やハチドリサインが特徴的である。
治療
- 第一選択:対症療法(パーキンソン病治療薬は無効例が多い)
- 補助療法:リハビリテーション、嚥下訓練、栄養管理
- 注意点:転倒・誤嚥性肺炎の予防、介護体制の整備
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Parkinson病 | 安静時振戦・L-dopa効果あり | MRIで中脳萎縮少ない |
| 多系統萎縮症 | 小脳失調・自律神経障害 | 小脳・橋の萎縮が主体 |
| 大脳皮質基底核変性症 | 皮質症状(失行・感覚障害) | 片側性萎縮や皮質萎縮 |
補足事項
進行性核上性麻痺は臨床像が多彩で、非典型例も存在する。タウ蛋白を標的とした新規治療薬の開発が進められているが、現時点で根治療法は確立されていない。