腹腔内膿瘍
概要
腹腔内膿瘍は、腹腔内に限局した膿の貯留を特徴とする感染症であり、消化管穿孔や腹部手術、外傷などを契機に発症する。発熱や腹痛、炎症反応の上昇を伴い、重症化すると敗血症や多臓器不全へ進展しうる。適切な画像診断とドレナージ、抗菌薬治療が重要となる。
要点
- 原因は消化管穿孔や術後、外傷など多岐にわたる
- 画像診断(CT)が診断と治療方針決定に不可欠
- ドレナージと抗菌薬治療が治療の中心
病態・原因
腹腔内膿瘍は、消化管穿孔、虫垂炎、憩室炎、術後、外傷などにより腹腔内に細菌が侵入し、局所的な膿瘍形成をきたす。リスク因子には免疫低下、糖尿病、基礎疾患の存在がある。腸管内容物や血行性に細菌が播種されることもある。
主症状・身体所見
主な症状は発熱、腹痛、圧痛、悪寒、食欲不振であり、場合によっては嘔気や嘔吐、腹部膨満を伴う。腹膜刺激症状がみられることもあるが、膿瘍が深部の場合は症状が非特異的なことも多い。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液検査 | 白血球増多、CRP高値 | 感染・炎症反応の指標 |
| 腹部CT | 膿瘍腔(液体貯留+ガス像) | 診断・部位同定に最も有用 |
| 超音波検査 | 液体貯留、膿瘍像 | 表在性や大きな膿瘍で有用 |
腹部CTが最も感度・特異度ともに高く、膿瘍の部位や大きさ、周囲臓器との関係を評価できる。診断は臨床症状と画像所見の組み合わせで行う。
治療
- 第一選択:経皮的ドレナージ+広域抗菌薬投与
- 補助療法:補液・栄養管理・疼痛対策
- 注意点:ドレナージ困難例や多発・難治例では外科的対応が必要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 急性腹膜炎 | 汎発性腹膜刺激症状、ショック | CTで膿瘍形成なし |
| 肝膿瘍 | 右季肋部痛、肝腫大、黄疸 | 肝内に限局した膿瘍像 |
| Douglas窩膿瘍 | 骨盤痛、直腸診で圧痛 | 骨盤内に膿瘍形成 |
補足事項
高齢者や免疫抑制患者では症状が不明瞭な場合が多いため、疑った段階で早期に画像検査を行うことが重要。再発例や難治例では基礎疾患や隠れた穿孔・瘻孔の有無を再評価する。