特発性細菌性腹膜炎
概要
特発性細菌性腹膜炎(SBP)は、主に肝硬変などの基礎疾患を有する患者に発症する、明らかな腹腔内感染源を伴わない細菌性腹膜炎である。腹水中への細菌の移行によって発症し、早期診断と治療が予後に直結する。頻度は低いが、重篤な経過をとることが多い。
要点
- 肝硬変患者の腹水貯留時に好発
- 原因菌はグラム陰性桿菌が多い
- 早期診断・抗菌薬治療が重要
病態・原因
腸管内細菌が腸粘膜バリアを通過し、腹水中に移行して発症する。肝硬変や低蛋白血症、免疫低下がリスク因子となる。多くは単一菌感染で、主に大腸菌などグラム陰性桿菌が原因となる。
主症状・身体所見
発熱、腹痛、圧痛、時に腹膜刺激症状を認めるが、症状が乏しいこともある。意識障害や腎機能障害、ショックを呈することもあるため、肝硬変患者で急性腹症を疑う場合は本症を常に念頭に置く。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 腹水穿刺 | 好中球数上昇(250/μL以上) | 細胞数上昇が診断の鍵 |
| 腹水培養 | 細菌陽性 | グラム陰性桿菌が多い |
| 血液培養 | 陽性の場合あり | 重症例や菌血症合併時 |
腹水中好中球数250/μL以上が診断基準となる。腹水培養で原因菌を同定するが、培養陰性でも臨床経過から診断されることがある。画像検査は腹膜炎の他の原因除外に有用。
治療
- 第一選択:第三世代セフェム系抗菌薬静注
- 補助療法:腹水コントロール、循環管理、腎機能管理
- 注意点:早期治療開始と再発予防(ノルフロキサシン予防投与など)
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 急性腹膜炎 | 明らかな穿孔や膿瘍形成 | 画像で原因病変を確認 |
| 癌性腹膜炎 | 悪性腫瘍既往、腹水中腫瘍細胞 | 腹水細胞診で腫瘍細胞陽性 |
| 腹腔内膿瘍 | 局所的な膿瘍形成 | 画像診断で膿瘍を認める |
補足事項
再発率が高く、予防的抗菌薬投与が推奨される場合がある。肝硬変の進行例では腎障害(HRS)や敗血症性ショックに注意する。