肺膿瘍
概要
肺膿瘍は、肺実質内に限局性の化膿性壊死と膿瘍形成をきたす感染症である。嫌気性菌や口腔内常在菌の関与が多く、しばしば誤嚥を契機に発症する。治療には抗菌薬投与が中心となるが、重症例では外科的治療も検討される。
要点
- 誤嚥や口腔内細菌感染が主な原因
- 発熱・膿性喀痰・咳嗽などが主症状
- 画像検査で空洞形成を伴う陰影が特徴
病態・原因
主に誤嚥や口腔内衛生不良により、嫌気性菌や口腔内常在菌が肺に侵入し、局所的な化膿性壊死を生じる。慢性アルコール摂取、意識障害、基礎疾患(糖尿病、悪性腫瘍など)もリスク因子となる。
主症状・身体所見
発熱、悪寒、膿性喀痰、咳嗽、胸痛、体重減少がみられる。口臭やばち指を呈することもあり、慢性化すると全身状態の悪化が目立つ。聴診ではラ音や胸部打診で濁音を認める場合がある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 胸部X線・CT | 空洞形成を伴う浸潤影 | 液面形成や辺縁不整が特徴 |
| 喀痰培養 | 嫌気性菌・口腔内常在菌 | 培養は嫌気条件で実施 |
| 血液検査 | 炎症反応上昇 | 白血球増多、CRP高値 |
画像診断で空洞や液面形成を認めることが診断の決め手となる。喀痰や気管支鏡検体からの菌同定も重要。鑑別には肺癌や結核、膿胸などを考慮する。
治療
- 第一選択:ペニシリン系やカルバペネム系など広域抗菌薬の投与
- 補助療法:体位ドレナージ、栄養管理、呼吸理学療法
- 注意点:抗菌薬無効例や膿瘍破裂時は外科的切除やドレナージを検討
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 肺癌 | 進行性・血痰・腫瘤影 | 腫瘍マーカー・組織診断 |
| 肺結核症 | 慢性経過・空洞性病変 | 抗酸菌検査陽性 |
| 膿胸 | 胸水貯留・呼吸苦 | 胸腔穿刺で膿性胸水 |
補足事項
高齢者や基礎疾患を有する患者では重症化しやすく、治療期間も長期化する傾向がある。抗菌薬治療は4〜6週間を要することが多い。耐性菌や真菌感染も鑑別に注意する。