肺アスペルギローマ
概要
肺アスペルギローマは、既存の肺腔(空洞)内にアスペルギルス属真菌が塊(菌球)を形成した状態である。多くは結核や肺嚢胞、肺膿瘍などによる既存空洞を基盤として発症し、主に免疫機能が保たれた宿主にみられる。しばしば喀血の原因となり、重篤な場合は致死的となることがある。
要点
- 既存肺空洞内にアスペルギルス菌球が形成される
- 喀血が主症状で、時に大量出血となる
- 画像診断と真菌学的検査で確定する
病態・原因
過去の肺結核や肺膿瘍、嚢胞性疾患などで形成された空洞内に、吸入したアスペルギルス胞子が定着し菌塊を形成する。主に免疫正常者に発症し、空洞内の換気や排液障害がリスク因子となる。
主症状・身体所見
反復性の喀血が最も特徴的であり、時に致死的な大量喀血をきたすことがある。慢性的な咳嗽や血痰、まれに無症状で経過することもある。身体所見は特異的でないが、胸部聴診でラ音が聴取される場合もある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 胸部X線・CT | 空洞内に球状陰影、空洞壁と菌球の間に空気層(air crescent sign) | 位置変化で菌球が動くこともある |
| 喀痰培養・真菌染色 | アスペルギルス属真菌の検出 | 真菌遺伝子検査や血清抗体も補助的 |
画像診断で空洞内の菌球形成やair crescent signが特徴的である。喀痰や気管支鏡検体からの真菌検出、血清アスペルギルス抗体陽性も診断に有用。組織診断は確定に有用だが必須ではない。
治療
- 第一選択:外科的切除(喀血リスクが高い場合)
- 補助療法:抗真菌薬(イトラコナゾール、ボリコナゾールなど)、止血処置
- 注意点:大量喀血時は緊急対応、抗真菌薬単独では根治困難なことが多い
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 肺膿瘍 | 空洞内に液体貯留、発熱・炎症反応高値 | 真菌球形成なし、培養で細菌陽性 |
| 肺結核症 | 空洞形成+全身症状、慢性経過 | 抗酸菌検出、結核菌PCR陽性 |
補足事項
アスペルギローマは免疫抑制状態ではまれで、免疫低下例では侵襲性肺アスペルギルス症に進展することがある。外科的治療の適応やリスク評価が重要であり、喀血コントロールが治療の中心となる。