拡張型心筋症
概要
拡張型心筋症は、心室の拡張と収縮機能低下を特徴とする非虚血性心筋症である。進行性の心不全や不整脈、血栓塞栓症のリスクが高い。原因は特発性が多いが、遺伝やウイルス感染、自己免疫などが関与することもある。
要点
- 心室拡張と収縮機能低下が主徴
- 進行性心不全や致死的不整脈を合併しやすい
- 特発性だが遺伝・感染など多因子が関与
病態・原因
心筋のびまん性障害により心室が拡張し、収縮力が低下する。原因は特発性が多いが、遺伝的要因、ウイルス感染後、自己免疫、毒素、薬剤なども関与する。心室リモデリングが進行し、全身循環不全や致死的不整脈のリスクが高まる。
主症状・身体所見
労作時呼吸困難、易疲労感、起坐呼吸、浮腫などのうっ血性心不全症状が主である。進行例では夜間発作性呼吸困難や末梢循環不全、心臓聴診でⅢ音・Ⅳ音、心拡大を認めることが多い。不整脈や血栓塞栓症も重要な合併症である。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 心エコー | 左室拡大、駆出率低下(EF<40%) | 収縮・拡張障害の評価 |
| 胸部X線 | 心拡大、肺うっ血 | 心胸比増大 |
| 心電図 | 非特異的ST-T変化、不整脈 | 左脚ブロックなど合併 |
| 心臓MRI | 心筋線維化/遅延造影 | 鑑別診断や重症度評価に有用 |
心エコーで左室拡大と収縮低下を認め、冠動脈疾患・弁膜症・高血圧性心疾患など他疾患を除外することで診断する。心臓MRIは線維化や炎症の評価に有用である。心筋生検は原因検索や他疾患除外目的で行うことがある。
治療
- 第一選択:ACE阻害薬・β遮断薬・利尿薬による薬物療法
- 補助療法:心臓再同期療法、植込み型除細動器、抗凝固療法、塩分・水分制限
- 注意点:感染予防、突然死リスク対策、心移植の検討
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 虚血性心筋症 | 冠動脈疾患の既往・狭心痛 | 冠動脈造影で狭窄あり |
| 肥大型心筋症 | 左室肥大・心室中隔肥厚 | 心エコーで壁肥厚 |
| 拘束型心筋症 | 拡張障害が主体・心室壁肥厚なし | 心エコーで壁肥厚なし、拡張障害 |
補足事項
心筋症の中では最も頻度が高く、家族歴の聴取や遺伝子診断が推奨される場合がある。近年はSGLT2阻害薬やARNIなど新規薬剤の有効性も注目されている。進行例では心移植も治療選択肢となる。