僧帽弁逸脱症
概要
僧帽弁逸脱症(MVP)は、左心房と左心室の間にある僧帽弁の一部が心収縮時に左心房側へ膨隆する弁膜症である。しばしば無症状だが、心雑音や不整脈を伴うことがある。若年女性に多く、良性経過が多いが、まれに重篤な合併症を起こす。
要点
- 僧帽弁の弁尖が左房側へ逸脱する疾患
- 多くは無症状だが心雑音や不整脈を伴う
- 一部で僧帽弁閉鎖不全や塞栓症を合併
病態・原因
弁組織の粘液変性や結合組織の異常が主な原因で、先天性(Marfan症候群など)や加齢性変化、特発性の場合もある。弁尖や腱索の構造異常により、収縮期に弁尖が左房側へ膨隆する。
主症状・身体所見
多くは無症状だが、動悸、胸痛、めまい、失神などがみられることがある。身体所見では収縮中期クリック音と後期収縮期雑音が特徴的である。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 心エコー | 僧帽弁尖の左房側逸脱、弁逆流の有無 | 診断のゴールドスタンダード |
| 心電図 | 不整脈(上室性期外収縮など) | 合併する場合がある |
| 胸部X線 | 心拡大はまれ |
心エコーで収縮期に僧帽弁尖が6mm以上左房側へ逸脱することが診断基準となる。逆流の有無や程度も評価する。心電図やX線は補助的。
治療
- 第一選択:無症状例は経過観察、症状や逆流を伴えばβ遮断薬や外科的修復
- 補助療法:抗不整脈薬、抗凝固療法(塞栓症リスク例)、生活指導
- 注意点:感染性心内膜炎予防のための口腔衛生、重症例では弁置換も考慮
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 僧帽弁閉鎖不全症 | 逆流雑音が明瞭、心拡大が目立つ | エコーで逆流量・弁形態の違い |
| 三尖弁逸脱症 | 右心系症状、頚静脈怒張など | エコーで三尖弁の逸脱 |
補足事項
僧帽弁逸脱症は一般的に予後良好であるが、家族歴や結合組織疾患合併例では重症化リスクがある。定期的な心エコーによる経過観察が推奨される。