下垂体前葉ホルモン単独欠損症
概要
下垂体前葉で産生される複数ホルモンのうち、1種類のみが選択的に分泌低下または欠損する疾患。原因は先天性、後天性ともにあり、成長ホルモンやゴナドトロピンなどが単独で障害される。臨床症状は欠損するホルモンに依存して多彩である。
要点
- 下垂体前葉ホルモンのうち1種類のみが低下または欠損
- 症状は欠損するホルモンにより異なる
- 画像検査や負荷試験で診断される
病態・原因
本症は下垂体前葉の特定ホルモン産生細胞が先天的に発達障害をきたす場合や、炎症・外傷・腫瘍・自己免疫などにより後天的に障害される場合がある。代表的には成長ホルモン単独欠損症やゴナドトロピン単独欠損症が多い。
主症状・身体所見
成長ホルモン欠損では小児期に低身長、成人では筋力低下や脂質異常などがみられる。ゴナドトロピン欠損では性腺機能低下(無月経、性発達遅延、不妊)を呈する。症状は欠損ホルモンに特異的で、他の下垂体前葉ホルモンの分泌は保たれる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| ホルモン負荷試験 | 欠損ホルモンの反応低下 | 種々の刺激負荷で分泌動態を評価 |
| 血中ホルモン測定 | 欠損ホルモンのみ低値 | 他ホルモンは正常域 |
| MRI下垂体撮影 | 下垂体の形態異常や萎縮 | 腫瘍・炎症の除外も目的 |
ホルモン負荷試験や基礎分泌の測定で単一ホルモンのみの分泌低下を確認し、MRIで器質的病変の有無を評価する。診断には他の下垂体ホルモン分泌が正常であることの確認が必須。
治療
- 第一選択:欠損ホルモンの補充療法(例:成長ホルモン、性腺ホルモン)
- 補助療法:栄養・運動指導、心理的サポート
- 注意点:定期的なホルモンモニタリングと他ホルモンの新規欠損発症に注意
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 汎下垂体機能低下症 | 複数ホルモンが同時に欠損 | 多種類のホルモン低値 |
| 下垂体前葉機能低下症 | 前葉ホルモン全体の低下 | 全ホルモン低値 |
| ACTH単独欠損症 | ACTHのみ選択的に欠損 | コルチゾール低値・他正常 |
補足事項
小児と成人では症状が大きく異なるため、年齢ごとの臨床像に留意する。また、経過中に他ホルモンの新たな欠損が生じることがあり、定期的なフォローアップが重要となる。