胃・十二指腸潰瘍穿孔
概要
胃または十二指腸の消化性潰瘍が進行し、消化管壁を貫通して腹腔内に穿孔する急性腹症。腹膜炎を引き起こし、迅速な診断と治療が必要となる。高齢者やNSAIDs内服患者で発症リスクが高い。
要点
- 消化性潰瘍の重篤な合併症であり、急性腹症の原因となる
- 突然の激烈な腹痛と腹膜刺激症状が特徴
- 早期診断・緊急手術が予後改善に重要
病態・原因
胃や十二指腸の粘膜が持続的な胃酸やペプシンの作用で障害され、潰瘍が形成・進行する。ピロリ菌感染やNSAIDsの長期使用、喫煙、ストレスがリスク因子となる。潰瘍が全層に及ぶと穿孔し、内容物が腹腔内に漏出して腹膜炎を生じる。
主症状・身体所見
突然発症する激烈な上腹部痛が典型で、しばしば「板状硬」と呼ばれる著明な腹筋の緊張を伴う。悪心・嘔吐、ショック徴候、全身状態の急激な悪化がみられる。高齢者では症状が軽微な場合もある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 腹部単純X線 | 横隔膜下遊離ガス(free air) | 立位での確認が有用 |
| 腹部CT | 穿孔部位の特定、遊離ガス、液体貯留 | 感度・特異度ともに高い |
| 血液検査 | 炎症反応上昇、白血球増多、電解質異常 | 汎発性腹膜炎の評価 |
腹部X線でのfree air検出が診断の手がかりとなるが、CT検査はより詳細な情報を得られる。臨床症状と画像所見を総合して診断する。
治療
- 第一選択:緊急手術(穿孔部閉鎖術+腹腔洗浄)
- 補助療法:輸液・抗菌薬投与・ショック対策
- 注意点:術前後の全身管理と再発予防のための潰瘍治療(PPI投与、ピロリ除菌)
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 急性虫垂炎 | 右下腹部の限局痛、発熱 | free airは認めない |
| 急性胆嚢炎 | 右季肋部痛、Murphy徴、胆石の有無 | 腹部エコーで胆嚢腫大 |
| 腸管壊死 | 血便、全身状態悪化、基礎疾患あり | CTで腸管壁の造影不良 |
補足事項
高齢者や免疫抑制患者では典型的な症状がみられないことがある。穿孔後6時間以内の治療介入が予後を大きく左右する。保存的治療は極めて限られた症例にのみ適応される。