肛門周囲膿瘍
概要
肛門周囲膿瘍は肛門や直腸周囲の組織に膿がたまる感染症で、激しい局所痛や発赤・腫脹を伴う。主に肛門陰窩からの細菌感染が原因となり、しばしば痔瘻へ進展することがある。迅速な診断と外科的処置が重要となる。
要点
- 肛門周囲の強い痛みと腫脹、発赤を呈する
- 原因は肛門腺の感染による膿瘍形成が多い
- 早期の切開排膿と適切な抗菌薬投与が治療の基本
病態・原因
肛門陰窩からの細菌感染により肛門腺が化膿し、膿瘍を形成する。リスク因子として便秘や下痢、糖尿病、免疫低下などが挙げられる。主な起炎菌は大腸菌や嫌気性菌である。
主症状・身体所見
局所の激しい自発痛、発赤、腫脹、熱感が特徴的で、発熱や全身倦怠感を伴うこともある。進行すると膿瘍が皮膚表面に波動を触知したり、自然排膿することがある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 視診・触診 | 発赤・腫脹・波動・圧痛 | 局所所見が診断の決め手 |
| 超音波検査 | 膿瘍腔の存在を確認 | 深部膿瘍や範囲評価に有用 |
| 血液検査 | 白血球増多・CRP上昇 | 感染の全身反応を評価 |
診断は主に視診・触診による局所所見で行い、深部や複雑な膿瘍では超音波やMRIが補助となる。画像検査で膿瘍の広がりや深さを評価することが重要。
治療
- 第一選択:切開排膿術
- 補助療法:抗菌薬投与・鎮痛薬・局所清潔保持
- 注意点:糖尿病や免疫不全例では再発や重症化に注意
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 痔瘻 | 慢性経過・膿性分泌持続 | 瘻孔・瘻管の存在 |
| 蜂窩織炎 | 広範な発赤・境界不明瞭 | 皮膚深層のびまん性炎症 |
| 裂肛 | 排便時痛・出血 | 裂創の存在 |
補足事項
膿瘍の再発や治癒後に痔瘻を形成することが多く、治療後も経過観察が重要。糖尿病患者や免疫抑制状態では重症化しやすく、全身管理が必要となる。