神経性食思不振症
概要
神経性食思不振症(anorexia nervosa)は、極端な食事制限と体重減少を特徴とする摂食障害であり、主に思春期から若年成人女性に多い。著明な低体重、体型・体重への歪んだ認識、強いやせ願望が中心的な症候である。身体的・精神的合併症や高い死亡率を伴う。
要点
- 著明な体重減少とやせ願望が持続する
- 身体的合併症・精神症状が多彩に出現
- 早期診断と多職種連携による治療が重要
病態・原因
発症には遺伝的素因、家庭環境、社会的圧力、性格傾向(完璧主義・強い自己抑制)などが関与する。ストレスや思春期の心理的葛藤が引き金となり、体重増加への強い恐怖から極端な食事制限や過剰な運動が生じる。
主症状・身体所見
体重減少、BMIの著明な低下、無月経、徐脈、低体温、皮膚乾燥、脱毛、四肢末端の冷感などがみられる。自己評価の歪みや、食事・体重への強いこだわりが精神症状として現れる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血液検査 | 低栄養、電解質異常、肝機能障害 | 低カリウム血症、貧血、低アルブミン血症など |
| 心電図 | 徐脈、QT延長 | 不整脈リスクの評価 |
| 骨密度測定 | 骨量減少 | 骨粗鬆症の評価 |
診断はDSM-5などの診断基準を参考に、著明な低体重(BMI<17.5)、やせ願望、体重増加への強い恐怖、自己評価の歪みなどを確認する。身体所見や検査所見も総合的に判断する。
治療
- 第一選択:心理療法(認知行動療法、家族療法)
- 補助療法:栄養管理、身体合併症の治療、薬物療法(必要時)
- 注意点:急速な体重回復による再栄養症候群や心不全に注意
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 神経性過食症 | 過食と排出行動、体重は正常域 | 体重減少が目立たない |
| 甲状腺機能亢進症 | 発汗・動悸・手指振戦などの亢進症状 | 甲状腺ホルモン値が上昇 |
| 消化管腫瘍 | 局所性腹痛・吐血・便潜血など | 画像検査や腫瘍マーカーで異常 |
補足事項
治療抵抗性や再発が多く、長期的な経過観察と多職種による包括的アプローチが不可欠である。低栄養や電解質異常による急性合併症に注意し、家族や周囲のサポートも重要となる。