睡眠相後退症候群
概要
睡眠相後退症候群は、入眠・起床時刻が社会的要求より2時間以上遅れる概日リズム睡眠障害の一種である。主に思春期〜若年成人に多く、夜型生活の持続や遺伝的素因が関与する。社会生活への適応困難や学業・仕事への影響が問題となる。
要点
- 入眠・起床時刻が著しく遅延し日常生活に支障をきたす
- 睡眠時間自体は保たれるが社会的スケジュールと同期しない
- 思春期以降の若年層に多く、慢性化しやすい
病態・原因
生体内時計(サーカディアンリズム)の遅延により、睡眠の開始・終了時刻が後方にずれる。夜間の強い光曝露や不規則な生活習慣、遺伝的要因が発症に関与する。精神的ストレスや二次的な精神疾患が背景となることもある。
主症状・身体所見
主な症状は著しい入眠困難と朝の起床困難である。週末や長期休暇中は十分な睡眠が得られるが、平日は社会的義務に間に合わず遅刻や欠席が目立つ。身体所見は特異的なものに乏しいが、慢性的な眠気や集中力低下がみられる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 睡眠日誌 | 入眠・起床時刻の持続的遅延 | 2週間以上の記録が推奨される |
| アクチグラフィ | 睡眠・覚醒リズムの遅延 | 客観的評価として有用 |
| ポリソムノグラフィ | 睡眠構造は正常 | 他疾患除外目的で施行 |
診断は国際分類(ICSD)に準拠し、社会的要求に対し睡眠相の遅延が2週間以上持続し、他の睡眠障害や精神疾患によるものではないことを確認する。睡眠日誌・アクチグラフィによるリズム評価が重要。
治療
- 第一選択:光療法(朝の強い光曝露)、就寝時のメラトニン投与
- 補助療法:睡眠衛生指導、生活リズム調整、認知行動療法
- 注意点:自己判断での薬物乱用や昼夜逆転の助長を避ける
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 睡眠時無呼吸症候群 | 睡眠中の無呼吸・いびき、日中の過度な眠気 | ポリソムノグラフィで呼吸障害 |
| うつ病 | 抑うつ気分、興味喪失、早朝覚醒 | 精神症状・心理検査で鑑別 |
| 不安障害 | 入眠困難だが睡眠相の遅延はない | 不安症状が主、睡眠日誌で区別 |
補足事項
近年、スマートフォンやPCの夜間使用によるブルーライト曝露が睡眠相後退の一因として注目されている。学校や職場での配慮や社会的な啓発も重要である。