前庭神経炎
概要
前庭神経炎は、前庭神経の急性炎症により、激しい回転性めまいを主症状とする疾患である。聴力障害や耳鳴りは伴わず、ウイルス感染が発症に関与すると考えられている。発症は突然で、数日から数週間で徐々に改善する。
要点
- 急性発症の強い回転性めまいが特徴
- 聴力障害や耳鳴は通常認めない
- ウイルス感染が主な原因とされる
病態・原因
前庭神経炎は、主にウイルス感染(特に単純ヘルペスウイルス)による前庭神経の炎症が原因で発症する。リスク因子としては、上気道感染後や免疫力低下などが挙げられる。炎症により前庭神経の伝導障害が生じ、平衡感覚の異常をきたす。
主症状・身体所見
突然発症する激しい回転性めまいが特徴で、数時間から数日持続する。悪心・嘔吐を伴うことが多いが、難聴や耳鳴は認めない。眼振(主に水平・回旋性)がみられ、立位や歩行が困難となる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 前庭機能検査(温度刺激試験など) | 片側の前庭機能低下 | 外来で簡便に施行可能 |
| 聴力検査 | 正常 | 難聴を認めないことが鑑別に重要 |
| 眼振観察 | 一方向性水平・回旋性眼振 | 頭位変換で変化しない |
診断は臨床症状と神経学的所見から行い、脳卒中など中枢性疾患との鑑別が重要である。MRIなどで中枢性病変を除外する場合もある。
治療
- 第一選択:抗めまい薬(抗ヒスタミン薬、ベンゾジアゼピン系薬)、制吐薬
- 補助療法:前庭リハビリテーション
- 注意点:脳卒中など中枢性疾患の除外が必須
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| Meniere病 | 難聴・耳鳴を伴う | 聴力検査で感音難聴 |
| 良性発作性頭位眩暈症 | 頭位変換で誘発・増悪 | 頭位変換で眼振が出現・変化 |
補足事項
再発は稀であり、ほとんどの症例で後遺症なく回復する。前庭リハビリテーションは慢性期の平衡障害軽減に有効である。