三環系薬剤中毒
概要
三環系抗うつ薬の過量摂取による中毒状態。主に中枢神経系・循環器系・抗コリン作用症状を呈し、重篤な場合は致死的となる。早期診断と迅速な治療が重要となる。
要点
- 中枢神経抑制と抗コリン症状が特徴
- 致死的不整脈やショックに注意
- 血中濃度測定と心電図モニタリングが必須
病態・原因
三環系抗うつ薬(TCA)の過量摂取により、ナトリウムチャネル遮断作用、中枢神経系抑制、抗コリン作用、α受容体遮断など多彩な薬理作用が発現する。自殺企図による意図的な大量摂取が多い。
主症状・身体所見
意識障害、痙攣、昏睡などの中枢神経症状、頻脈、血圧低下、不整脈などの循環器症状、口渇、散瞳、尿閉、皮膚乾燥などの抗コリン症状がみられる。重症例では心停止や呼吸抑制も生じうる。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 心電図 | QRS延長、QT延長、各種不整脈 | QRS幅100ms以上は重症の指標 |
| 血中TCA濃度 | 高値 | 臨床症状と併せて評価 |
| 血液ガス | 代謝性アシドーシス | 重症例で併発しやすい |
心電図でのQRS延長やQT延長は重症度の判定に有用。血中TCA濃度は補助的だが、臨床症状が診断の中心となる。鑑別のため他薬物のスクリーニングも重要。
治療
- 第一選択:胃洗浄・活性炭投与(早期)、重症例では炭酸水素ナトリウム静注
- 補助療法:不整脈管理、気道確保・人工呼吸管理、痙攣時はベンゾジアゼピン系薬投与
- 注意点:抗不整脈薬(Ia, Ic)は禁忌、再発予防のため精神科的介入も必要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| アスピリン中毒 | 呼吸性アルカローシス、耳鳴 | 血中サリチル酸高値、心電図異常少 |
| ベンゾジアゼピン中毒 | 呼吸抑制主体、抗コリン症状なし | 血中ベンゾジアゼピン高値 |
補足事項
TCA中毒は少量でも重篤化するため、疑われた場合は早期に救急対応を開始する。治療抵抗性の不整脈や痙攣に注意し、精神科的フォローアップが再発予防に不可欠。