ビタミンK欠乏症
概要
ビタミンK欠乏症は、血液凝固因子の活性化に必要なビタミンKが不足することで発症する出血性疾患である。新生児や肝疾患、長期抗菌薬投与時に発症しやすい。重症例では頭蓋内出血など生命を脅かす出血をきたすことがある。
要点
- ビタミンK依存性凝固因子(II, VII, IX, X)活性低下による出血傾向
- 新生児・乳児や消化管疾患患者、抗菌薬長期投与でリスク増大
- 早期診断とビタミンK投与が重篤な出血予防に重要
病態・原因
ビタミンKは肝臓で血液凝固因子のγ-カルボキシ化に必須であり、不足すると凝固因子活性が低下する。新生児では腸内細菌叢未発達や母乳中ビタミンK含有量の低さ、成人では脂肪吸収障害や抗菌薬長期使用、肝疾患が主な原因となる。
主症状・身体所見
皮下出血、点状出血、消化管出血、血尿、鼻出血など多彩な出血症状を呈する。新生児では臍出血や頭蓋内出血が特徴的であり、重症例ではショックや貧血を伴うこともある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| PT(プロトロンビン時間) | 延長 | 最も早期かつ鋭敏な指標 |
| APTT | 軽度延長または正常 | 重症例で延長することがある |
| フィブリノゲン | 正常 | DICとの鑑別に有用 |
| ビタミンK依存性因子 | 活性低下 | II, VII, IX, Xが低下 |
PT延長が最も鋭敏であり、APTTは重症例で延長する。フィブリノゲンは正常で、DICとの鑑別に役立つ。ビタミンK依存性凝固因子(II, VII, IX, X)が低下していることが特徴。画像検査では頭蓋内出血や消化管出血の評価が必要となる。
治療
- 第一選択:ビタミンK製剤の静脈内または筋肉内投与
- 補助療法:新鮮凍結血漿投与や止血処置、基礎疾患の治療
- 注意点:新生児では予防的なビタミンK投与が推奨される
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 播種性血管内凝固(DIC) | 出血と同時に血栓症状、フィブリノゲン低下 | フィブリノゲン低下、Dダイマー上昇 |
| von Willebrand病 | 鼻出血・皮下出血が多く家族歴あり | vWF活性低下、APTT延長 |
| (先天性)血友病 | 男児に多く、関節内出血が特徴 | 第VIIIまたはIX因子活性低下、APTT延長 |
補足事項
新生児ビタミンK欠乏症は予防的ビタミンK投与により大幅に減少しているが、母乳栄養児や基礎疾患を有する小児では注意が必要。成人では脂肪吸収不良や抗菌薬長期投与時に発症しやすい。ビタミンK拮抗薬(ワルファリン)との関連にも注意する。