トキソプラズマ症
概要
トキソプラズマ症はトキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)による寄生虫感染症で、ヒトを含む多くの哺乳類や鳥類に感染する。免疫正常者では多くが無症状だが、免疫不全者や妊婦では重篤な病態を呈することがある。
要点
- トキソプラズマ・ゴンディが原因の寄生虫感染症
- 免疫不全者や妊婦で重症化・先天感染リスク
- 血清学的検査や画像診断が診断に重要
病態・原因
トキソプラズマ・ゴンディは猫科動物を終宿主とし、糞便中に排出されるオーシストが経口感染源となる。生肉摂取やオーシストを含む水・土壌接触がリスク因子。免疫正常者では主に潜伏感染となるが、免疫抑制状態や妊娠中の初感染では重篤化しやすい。
主症状・身体所見
多くは無症状だが、急性感染では発熱、リンパ節腫脹、筋肉痛などがみられる。免疫不全者では脳炎や肺炎、網脈絡膜炎を生じることがある。先天感染の場合、胎児に水頭症、脳内石灰化、網脈絡膜炎など重篤な障害をきたす。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血清抗体検査 | IgM/IgG抗体陽性 | 急性感染や既感染の判別に有用 |
| 画像検査(MRI/CT) | 脳内リング状病変 | 免疫不全者の脳症例で特徴的 |
| PCR検査 | トキソプラズマDNA検出 | 髄液・羊水・血液等で実施 |
血清学的検査で急性・既感染の鑑別を行い、免疫不全者では画像検査で脳病変を確認する。先天感染疑い時は羊水PCRも有用。診断は臨床症状、疫学的背景、検査所見の総合判断による。
治療
- 第一選択:ピリメタミン+スルファジアジン+葉酸
- 補助療法:クリンダマイシンやアトバコン、対症療法
- 注意点:妊婦・新生児では治療薬選択や胎児への影響に留意
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| サイトメガロウイルス感染症 | 網脈絡膜炎・脳内石灰化も共通だが、抗CMV抗体陽性 | ウイルスDNA検出、IgM/IgG抗体 |
| クリプトコックス髄膜炎 | 免疫不全者での中枢神経症状 | 髄液インク染色・培養陽性 |
| ニューモシスチス肺炎 | 免疫不全者で呼吸器症状 | 肺胞洗浄液でのPCR・染色 |
補足事項
トキソプラズマ症は日和見感染症の代表であり、HIV感染症や臓器移植患者での発症が問題となる。妊婦の感染予防指導や、免疫抑制患者に対する予防投薬も重要。先天感染の早期診断・治療が予後改善に寄与する。