腹壁瘢痕ヘルニア

概要

腹壁瘢痕ヘルニアは、開腹手術後の瘢痕部から腹腔内臓器や腸管が脱出するヘルニアである。術後合併症として比較的頻度が高く、高齢者や肥満、創感染などがリスク因子となる。腸閉塞や絞扼をきたすことがあり、緊急手術が必要となる場合もある。

要点

  • 開腹術後の創部瘢痕から発生する腹壁ヘルニア
  • 腸閉塞や絞扼のリスクがあり緊急対応が必要なこともある
  • 治療は原則として外科的修復が推奨される

病態・原因

腹壁瘢痕ヘルニアは、開腹手術後の創部瘢痕が十分に癒合せず、腹壁の支持力が低下することで発生する。肥満、創部感染、慢性咳嗽、腹圧亢進状態などが発症リスクを高める。腹腔内圧の上昇や創部の治癒障害が誘因となる。

主症状・身体所見

腹部手術の既往がある部位に軟らかい膨隆(ヘルニア膨隆)を認める。立位や腹圧上昇時に膨隆が明瞭となり、圧痛や不快感を伴うことが多い。腸閉塞症状(腹痛、嘔吐、排ガス・排便停止)や絞扼による激しい痛みが出現する場合もある。

検査・診断

検査所見補足
触診瘢痕部の膨隆、圧痛、還納性など立位・腹圧時に強調
腹部CTヘルニア門・内容臓器の脱出絞扼・閉塞の評価に有用
超音波検査ヘルニア内容の動態、血流の評価小児や妊婦にも適応

診断は手術歴のある腹壁瘢痕部に生じる還納性膨隆の触診で疑い、腹部CTでヘルニア門や内容臓器の脱出、絞扼や腸閉塞の有無を確認する。超音波検査も補助的に用いられる。

治療

  • 第一選択:外科的修復術(メッシュ補強が一般的)
  • 補助療法:腹帯やコルセットの装着(根治的治療ではない)
  • 注意点:絞扼や閉塞を認める場合は緊急手術適応、感染の有無に注意

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
外鼠径ヘルニア鼠径部に膨隆、手術歴なしCTで部位・経路が異なる
絞扼性イレウス腹部膨隆なく急性腹症CTでヘルニア門ない
成人の臍ヘルニア臍部に膨隆、瘢痕部でない触診・画像で部位特定

補足事項

再発率低減のためにはメッシュを用いた修復が標準であるが、感染リスクや全身状態に応じて術式選択が必要となる。肥満や慢性咳嗽、便秘などリスク因子の是正も重要である。

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