成人の臍ヘルニア
概要
成人の臍ヘルニアは、臍部(へそ)を中心とした腹壁の筋膜欠損部から腹腔内容が脱出する疾患である。小児と異なり、自然治癒はほとんど期待できず、肥満や腹圧上昇が発症に関与する。嵌頓や絞扼などの重篤な合併症をきたすこともある。
要点
- 成人では自然治癒が期待できず手術適応となる
- 肥満・妊娠・腹水など腹圧上昇が発症リスク
- 嵌頓・絞扼による腸閉塞や壊死に注意
病態・原因
腹壁中央の臍輪部の筋膜欠損を通じて、腸管や大網など腹腔内容が皮下に脱出する。成人例では肥満、妊娠、腹水、慢性咳嗽などによる腹圧上昇が主な誘因となる。小児と異なり、筋膜の自然閉鎖は期待できない。
主症状・身体所見
臍部の膨隆・腫瘤が主症状で、立位や腹圧上昇時に増大する。圧痛や発赤、還納不能の場合は嵌頓や絞扼を疑う。腸閉塞症状(腹痛、嘔吐、排便・排ガス停止)を伴うこともある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 身体診察 | 臍部腫瘤、膨隆 | 還納性・非還納性の評価 |
| 腹部超音波 | ヘルニア嚢内の内容物・還納性 | 嵌頓・腸閉塞の有無確認 |
| 腹部CT | ヘルニア門の大きさ・内容物 | 絞扼・壊死の評価 |
超音波やCTでヘルニア門の大きさや内容物、嵌頓・絞扼の有無を評価する。還納性の有無や腹腔内臓器障害の有無が手術適応や緊急性判断に重要となる。
治療
- 第一選択:ヘルニア修復術(メッシュ法または縫合法)
- 補助療法:腹圧上昇因子の是正(減量、腹水コントロールなど)
- 注意点:嵌頓・絞扼例は緊急手術、再発予防に腹圧管理が重要
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 外鼠径ヘルニア | 鼠径部に脱出、臍部ではない | 触診・局在で判別 |
| 腹壁瘢痕ヘルニア | 開腹術瘢痕部に発生 | 既往歴・部位 |
| 臍帯ヘルニア | 新生児・小児で発症、成人では稀 | 年齢・先天性の有無 |
補足事項
成人臍ヘルニアは肥満や腹水、慢性的な腹圧上昇疾患の増加により近年増加傾向にある。再発防止には術後の腹圧管理や生活指導が重要である。