急性呼吸窮迫症候群
概要
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、様々な重症疾患に伴い発症する急性の非心原性肺水腫である。肺胞―毛細血管障害により、急激な呼吸不全と低酸素血症を呈する。集中治療を要し、死亡率も高い重篤な疾患である。
要点
- 急性発症の重度低酸素血症と両側肺浸潤影が特徴
- 原因疾患は敗血症、重症肺炎、外傷など多岐
- 人工呼吸管理を中心とする集学的治療が必要
病態・原因
ARDSは敗血症、重症肺炎、外傷、吸引、膵炎など多様な全身性・局所性障害を契機に発症する。炎症性サイトカインの放出により肺胞上皮・血管内皮が障害され、肺胞内への水分・蛋白漏出が起こる。
主症状・身体所見
急速に進行する呼吸困難、頻呼吸、チアノーゼ、低酸素血症がみられる。身体所見では両側性ラ音や呼吸補助筋の使用、重症例では意識障害やショックも認める。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 胸部X線/CT | 両側性びまん性浸潤影 | 心拡大やうっ血は目立たない |
| 動脈血ガス | PaO2/FiO2低下(300以下) | 低酸素血症、CO2は正常〜低下 |
| BNP・心エコー | 原則正常範囲 | 心原性肺水腫との鑑別 |
診断はベルリン定義に従い、急性発症・両側肺浸潤影・心不全や過剰輸液によらないこと・PaO2/FiO2比300以下を満たす。CTでは肺野全体のすりガラス影や浸潤影が特徴的。
治療
- 第一選択:低容量肺保護換気による人工呼吸管理
- 補助療法:原疾患治療、鎮静、適切な輸液管理、栄養管理
- 注意点:過剰な輸液や高圧換気の回避、感染対策
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 心原性肺水腫 | 心不全所見・心拡大 | BNP高値・心エコー異常 |
| 肺炎 | 限局性陰影・発熱・膿性痰 | 局所性浸潤影・培養陽性 |
| 急性肺血栓塞栓症 | 急な胸痛・右心負荷 | D-dimer高値・CT血管造影 |
補足事項
ECMO(体外式膜型人工肺)は重症例で考慮される。ARDSは多臓器不全の一部として発症することも多く、全身管理が極めて重要である。予後改善には肺保護戦略の徹底が不可欠である。