急性ニコチン中毒
概要
急性ニコチン中毒は、短時間に大量のニコチンを摂取することで発症する中毒状態である。主にタバコや電子タバコ、殺虫剤などからの経口・経皮・吸入摂取が原因となる。中枢神経系・自律神経系・消化器系症状を呈し、重症例では致死的となる。
要点
- 短時間での大量摂取により神経・消化器症状が出現
- 重症例では呼吸抑制や心停止に至ることがある
- 迅速な除染と支持療法が治療の中心となる
病態・原因
ニコチンは神経筋接合部のニコチン性アセチルコリン受容体を刺激し、初期には過剰な神経興奮を、進行すると抑制状態を引き起こす。主な原因はタバコ製品の誤飲・過量摂取や殺虫剤の誤用であり、経口・経皮・吸入経路を問わず発症する。
主症状・身体所見
初期には悪心、嘔吐、腹痛、流涎、頭痛、めまい、頻脈、血圧上昇などがみられる。進行すると筋力低下、呼吸困難、徐脈、血圧低下、痙攣、意識障害、呼吸停止など重篤な症状が出現する。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 血中ニコチン濃度 | 上昇 | 臨床症状との相関で参考 |
| 血液ガス分析 | 呼吸性アシドーシス、低酸素血症等 | 重症例での呼吸状態評価に有用 |
| 心電図 | 頻脈、徐脈、不整脈など | 心機能障害の評価 |
臨床的には摂取既往と症状から診断する。重症例では呼吸抑制や意識障害の評価、心電図異常の確認が重要。血中ニコチン濃度は診断補助となるが、治療方針は臨床所見を優先する。
治療
- 第一選択:胃洗浄・活性炭投与(摂取直後)、気道確保・人工呼吸管理
- 補助療法:循環管理、痙攣時の抗けいれん薬投与、補液
- 注意点:二次中毒防止、速やかな除染、経皮曝露時は皮膚洗浄
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 有機リン中毒 | 縮瞳・徐脈・発汗・筋線維束収縮が目立つ | コリンエステラーゼ活性低下 |
| アルコール中毒 | 意識障害・酩酊・低血糖が主 | 血中アルコール濃度上昇 |
| 急性炭酸リチウム中毒 | 振戦・運動失調・腎障害など | 血中リチウム濃度上昇 |
補足事項
小児のタバコ誤飲や電子タバコ液の経口摂取が増加傾向にあり、家庭内での管理が重要である。特異的な解毒薬は存在せず、支持療法が中心となる。