単純ヘルペス脳炎
概要
単純ヘルペス脳炎は、単純ヘルペスウイルス(主にHSV-1)によって引き起こされる急性脳炎で、成人のウイルス性脳炎の中で最も重篤な疾患の一つである。側頭葉を中心に脳実質の壊死性炎症を生じ、早期治療が予後を左右する。
要点
- 急性発症の意識障害とけいれん、精神症状が特徴
- 側頭葉優位のMRI異常と髄液PCRで診断
- 早期のアシクロビル投与が予後改善の鍵
病態・原因
単純ヘルペスウイルス(HSV-1)が嗅神経や三叉神経節を介して中枢神経系に侵入し、主に側頭葉や辺縁系に壊死性炎症を引き起こす。免疫低下時やウイルス再活性化がリスクとなる。
主症状・身体所見
発熱、頭痛、意識障害、けいれん、記憶障害、精神症状(錯乱、幻覚、異常行動)が急性に出現する。側頭葉優位の症状(失語や嗅覚異常)も特徴的。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 頭部MRI | 側頭葉・辺縁系の高信号域、浮腫、出血像 | T2/FLAIRで異常が目立つ |
| 髄液検査 | 単核球優位の細胞増多、蛋白上昇、糖正常 | HSV-DNA PCR陽性が診断の決め手 |
| 脳波 | 側頭葉優位の周期性放電(PLEDs) | 非特異的だが補助診断となる |
髄液中HSV-DNAのPCR検査が最も感度・特異度が高い。画像では側頭葉優位の異常が典型的。診断基準は臨床症状、画像、髄液所見、PCR陽性を総合して行う。
治療
- 第一選択:アシクロビルの静脈投与
- 補助療法:抗けいれん薬、脳浮腫対策、支持療法
- 注意点:治療開始遅延で致死率・後遺症率が増加
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 日本脳炎 | 高齢者・夏季・パーキンソン様症状 | MRIで基底核・視床病変 |
| 自己免疫性脳炎 | 若年女性・腫瘍合併・精神症状強い | 髄液抗体陽性・MRI非特異的 |
| ウイルス性髄膜炎 | 髄膜刺激症状主体・意識障害少ない | 髄液細胞数多いが脳実質病変なし |
補足事項
小児ではHSV-2による発症もありうる。再発例や免疫不全例では非典型例も存在する。早期治療の重要性が強調されている。