日本脳炎
概要
日本脳炎は日本脳炎ウイルスによって引き起こされる急性ウイルス性脳炎で、主に蚊(コガタアカイエカ)を媒介として感染する。東アジアや東南アジアで流行し、重篤な神経症状を呈することが多い。ワクチンによる予防が有効な疾患である。
要点
- 日本脳炎ウイルスが蚊を介してヒトに感染する
- 急性脳炎をきたし、高率で神経後遺症を残す
- 予防接種によるワクチンが有効
病態・原因
日本脳炎ウイルスはフラビウイルス科に属し、主にブタや水鳥で増殖し、蚊(コガタアカイエカ)が媒介する。ヒトは終末宿主であり、ウイルスが血流を介して中枢神経系に侵入し、脳炎を引き起こす。
主症状・身体所見
高熱、頭痛、意識障害、けいれんなどの急性脳炎症状が特徴的である。項部硬直や麻痺などの髄膜脳炎徴候もみられる。重症例では昏睡や呼吸障害、運動麻痺などを呈し、神経後遺症を残すことが多い。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 髄液検査 | 単核球優位の細胞増多、軽度蛋白上昇 | 髄液中でウイルスRNAや抗体検出 |
| 血清抗体検査 | 抗日本脳炎ウイルスIgM陽性 | 急性期・回復期ペア血清で4倍以上上昇 |
| 頭部MRI | 視床・脳幹・基底核の異常信号 | 特に視床病変が特徴的 |
診断は臨床症状と流行地での疫学的背景、髄液・血清でのウイルス抗体陽性、画像所見などを総合して行う。PCRによるウイルス遺伝子検出も有用。
治療
- 第一選択:対症療法(抗ウイルス薬は無効)
- 補助療法:脳圧降下薬、抗けいれん薬、呼吸管理
- 注意点:早期リハビリテーションと後遺症管理、ワクチン接種による予防
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 単純ヘルペス脳炎 | 側頭葉優位の障害、急速進行 | MRIで側頭葉病変、HSV-PCR陽性 |
| ウエストナイル熱 | 発熱・筋肉痛・発疹が目立つ | ウエストナイルウイルス抗体陽性 |
| インフルエンザ脳症 | 小児中心、意識障害が急速進行 | 血清・髄液でインフルエンザウイルス検出 |
補足事項
日本脳炎は致死率が高く、生存例でも神経後遺症が残ることが多い。日本ではワクチン接種の普及により発症は減少しているが、流行地域への渡航者や小児では注意が必要である。