メタノール中毒

概要

メタノール中毒は、工業用アルコールや不純な酒類などに含まれるメタノール摂取により発症する急性中毒である。代謝産物であるホルムアルデヒドや蟻酸が中枢神経障害や視神経障害、代謝性アシドーシスを引き起こす。重症例では失明や死に至ることもある。

要点

  • 代謝性アシドーシスと視力障害が特徴
  • 早期の治療介入が生命予後を左右する
  • エタノールやホメピゾールによる治療が有効

病態・原因

メタノールは体内でアルコール脱水素酵素によりホルムアルデヒド、さらに蟻酸へ代謝され、これらが強い毒性を持つ。主なリスクは誤飲、不純酒類摂取、職業曝露などである。蟻酸によるミトコンドリア障害が特に視神経に強く作用する。

主症状・身体所見

初期は悪心、嘔吐、腹痛、頭痛、めまいなど非特異的症状が多い。数時間から1日程度の潜伏期の後、視力障害(霧視、失明)、呼吸促迫、意識障害、痙攣などが出現する。重症例ではショックや死に至る。

検査・診断

検査所見補足
動脈血ガス代謝性アシドーシスアニオンギャップ・浸透圧ギャップ上昇
血中メタノール濃度高値診断確定に有用
血清電解質アニオンギャップ増加代謝性アシドーシスの指標
眼底検査乳頭浮腫・視神経障害視力障害の評価

診断は既往や曝露歴、特徴的な代謝性アシドーシス、浸透圧ギャップ、視力障害、血中メタノール濃度で行う。画像診断では基底核や視神経の障害がMRIで捉えられることがある。

治療

  • 第一選択:エタノールまたはホメピゾール投与
  • 補助療法:重炭酸ナトリウムによるアシドーシス補正、ビタミンB群投与、血液透析
  • 注意点:早期治療開始と厳格なモニタリングが予後改善に重要

鑑別・比較

疾患見分けるキーポイント検査差異
エチレングリコール中毒腎障害とシュウ酸カルシウム結晶尿沈渣で結晶確認、腎不全進行
一酸化炭素中毒チェリーレッドの皮膚、頭痛・めまい血中COHb高値、代謝性アシドーシスは軽度
急性アルコール中毒精神症状が主、視力障害は稀血中エタノール高値、アシドーシスは軽度

補足事項

ホメピゾールはアルコール脱水素酵素阻害薬で、エタノールより副作用が少なく推奨される。血液透析は重症例や腎不全、重度アシドーシス、視力障害例で適応となる。予防には工業用アルコールの適切な管理が重要。

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