トルエン中毒
概要
トルエン中毒は有機溶剤であるトルエンの吸入や経口摂取によって生じる急性あるいは慢性の中毒状態。中枢神経抑制作用や多臓器障害を引き起こし、乱用による依存や社会的問題も多い。主に若年層のシンナー遊び等で発生する。
要点
- トルエンは中枢神経抑制・多臓器障害を引き起こす
- 急性・慢性中毒ともに精神症状や神経症状が顕著
- 慢性中毒では不可逆的な臓器障害や依存症を生じうる
病態・原因
トルエンは脂溶性が高く、吸入や経口摂取で急速に中枢神経系に移行し抑制作用を示す。有機溶剤乱用や職業曝露、意図的吸引(シンナー遊び)などが主な原因。長期曝露では脳・肝・腎・心筋など多臓器障害を生じる。
主症状・身体所見
急性中毒では酩酊様状態、言語障害、歩行障害、意識障害、錯乱、幻覚、痙攣などがみられる。慢性中毒では記憶障害、認知機能低下、末梢神経障害、筋力低下、体重減少、皮膚炎、腎障害、肝障害などが進行する。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 尿中トルエン代謝物 | 馬尿酸・オルトクレゾールの上昇 | 曝露指標として有用 |
| 血液検査 | 肝・腎機能障害、電解質異常(低カリウム血症等) | 慢性障害や合併症の評価 |
| 頭部MRI/CT | 脳萎縮、白質病変 | 慢性例で不可逆的変化を認める |
診断は曝露歴・症状・尿中代謝物の上昇などから行い、慢性例では画像診断も参考となる。精神症状や神経症状の評価も重要。
治療
- 第一選択:曝露中止・新鮮空気下での安静・対症療法
- 補助療法:輸液、電解質補正、ビタミンB群投与、リハビリテーション
- 注意点:再曝露防止、依存症対策、精神科的フォロー
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| ベンゼン中毒 | 骨髄抑制・白血球減少が顕著 | 骨髄抑制所見、尿中フェノール上昇 |
| メタノール中毒 | 視力障害・代謝性アシドーシスが主体 | 代謝性アシドーシス、血中メタノール上昇 |
補足事項
トルエン中毒は社会的背景や精神科的問題とも密接に関連し、再発防止や社会復帰支援が重要となる。慢性例では不可逆的障害が残ることも多く、早期発見・介入が予後改善に寄与する。