肺胞微石症
概要
肺胞微石症は、肺胞内にリン酸カルシウムの微細な石灰沈着物(微石)がびまん性に蓄積する稀な遺伝性肺疾患である。進行性に肺機能が障害されるが、初期は無症状のことが多い。主に若年成人で発症し、経過とともに呼吸不全へ進行することがある。
要点
- 肺胞内に微細な石灰沈着物が蓄積する
- 初期は無症状、進行すると呼吸不全に至る
- X線・CTで特徴的なびまん性石灰化像を示す
病態・原因
本症は主にSLC34A2遺伝子変異による常染色体劣性遺伝疾患で、肺胞II型細胞のリン酸輸送障害によりリン酸カルシウムが沈着する。家族歴を有する例が多く、他臓器への石灰化は原則みられない。
主症状・身体所見
多くは無症状で偶然発見されることが多いが、進行例では労作時呼吸困難や咳嗽、ばち指などが出現する。聴診上はラ音を認める場合がある。
検査・診断
| 検査 | 所見 | 補足 |
|---|---|---|
| 胸部X線 | 両側びまん性粒状陰影、砂粒状石灰化 | 進行例で肺野全体に広がる |
| 胸部CT | 肺胞領域に微細な高吸収域(石灰化) | “砂嵐状”または“卵殻状”石灰化像 |
| 血液検査 | 多くは異常なし | 進行例で低酸素血症 |
画像診断が中心で、胸部X線やCTでびまん性の石灰化像が診断的意義を持つ。確定診断には気管支肺胞洗浄液や肺生検で微石の確認が有用。鑑別には石灰化を伴う他疾患との区別が重要。
治療
- 第一選択:有効な特異的治療法はなく、経過観察が基本
- 補助療法:呼吸リハビリテーション、酸素療法
- 注意点:進行例では呼吸不全管理や肺移植を検討
鑑別・比較
| 疾患 | 見分けるキーポイント | 検査差異 |
|---|---|---|
| 石綿肺 | 職業歴、胸膜プラーク | 石綿曝露歴・胸膜肥厚像 |
| サルコイドーシス | 若年女性、両側肺門リンパ節腫脹 | 非乾酪性類上皮細胞肉芽腫 |
| 肺胞蛋白症 | 洗浄液で乳白色、蛋白沈着 | BALFでPAS陽性蛋白 |
補足事項
本疾患は進行が緩徐であり、長期間無症状の経過をたどることが多い。肺移植以外の根治的治療は現時点で確立されていない。遺伝カウンセリングの対象となる場合がある。